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へ調の旋律 (ルービン・..![]() |
[ピアノのお稽古] |
スカルラッティ ソナタ集 |
2007/3/30(金) 午前 2:49 |
昨年秋にブーニンのリサイタルを聞きに行った。
あまり大向こうをうならせるような大曲でもないD・スカルラッティのソナタの演奏が印象に残った。 演奏会評は以下↓ http://hemiq.a.la9.jp/events/concerts.htm#A072 で、尻の軽い私メは、以来スカルラッティのソナタ全150曲の全曲試奏に取り組むことにした。 ![]() 楽譜は20年ほど前に韓国で買った「台林出版社」版。韓国は当時著作件保護国際協定には加入していず、楽譜は安かった。 写真を見て欲しい。 第一巻と三巻がイタリア語「PIANO-OPERE」で,、2巻だけドイツ語「KLAVIER-WERKE」 になっている。 海賊版丸出し、とゆーか(^^) 余談だが、最近ヒマにあかして例の「冬のソナタ」をオンデマンドTVで見た。 恋人たちがいい雰囲気になると、フランシス・レイの「白い恋人たち」とか、何だとか 平気で挿入してしまうのだ。NHKで放映したときは、バックグランド音楽が鳴る度に 著作権担当者が大汗かいて調べ、カットしたりしたらしい。 著作権に無頓着なのは現在も変っていないと見える、苦笑。 ソナタと銘打っているが、ドイツ古典派の堂々たるソナタ形式を連想してもらっては困る。 一楽章形式の雑多な運指と様々な調性のスケールの練習曲集と思っていい。 だいたいが二分以内でカタがつくくらいの規模である。 この簡易な性格が災いし、大曲主義的な日本のクラシック音楽界の評価は ピアノの練習曲以上の意味を与えてはいなかったのではないだろうか? この見かけの軽さを侮ってはいけない。 全曲を通奏して痛感するのは、これはモーツアルトやベートーベンで確立する いわゆる古典音楽でない、別のコンセプトの音楽だ、ということだ。 執拗な音形の繰り返しは、自由なアドリブに発展し、時として不可解な和声が響く。 ちなみに、ソナタ127イ短調の中間部では10本の指全部で同時に押さえる小節がある。 下から C-E-F#-A-B(H) A-B(H)-D#-E-F# 重苦しくも狂おしい音響である。 信時潔「和声楽」(!)で勉強した私にはもう分析する気も起こらない。 つまりこれは、3度を基本とした解決進行していく和声系ではなく、 音響そのものを意図している。 「ん?これって、なんていう和音ですぅ?」とスカルラッテイ先生に尋ねると 「さ?でも、おもしろいじゃん?」といわれるような。 まあ、平易で簡素、安定した和声法で普通に書かれているものが大半なんだけど、 それでも臨機応変の即興性は形式的な整合性をちっとも気にしない。 嬉々として「音で遊んでいる」イタリア音楽の精神風土がある。 ソナタ110番ホ短調をぜひ弾いて欲しい。 まったく古典的な序から始まるのだが、ダイナミックな経過部を経てまったく唐突に 中間部の流れるようなパッセージが歌われる。 この旋律線の呼吸と調子は異世界からの歌声に聞こえてしまう。 例えば、早朝静まり返った池の上で名も知らぬ水鳥が、人間には理解できない 旋法で、鳥の世界の心情を歌っているように。 確かに初めて聞くのだが、しかしこの歌は知っている。 異世界ではあるが、そこにはその秩序がある。 われわれはまた別の感覚の体系があるということを聞き取るのである。 ま、基本的には簡素な練習曲なので、素人ピアニスト諸氏には是非とも弾いて欲しい。 モーツアルトのソナタもいいけど、スカルラッティははるかにあっけらかんと 刺激的ですよ。 ところで全曲の最後ソナタ150番ト短調。 なんと、これはまるでバッハ風のフーガである。 うーん。無機的なテーマが出、4度下で応答するという全く正当なフーガの入りがあり、 次第に求心力を高め、クターブ奏で盛り上げ、最後にアダージョのコーダがあり ト調の長三和音で終了する、ここだけは例外的に5ページも続く堂々とした大曲。 これが最後に置かれているである。 「やれば出来るじゃん!」と思わず失礼なセリフをD・スカルラッティ先生にはいてしまった。 「素人相手の練習曲なんで、まあ面白軽く書いてきたんだよ。実は本気を出せば バッハなんて目じゃないね。」どうだい!といわんばかりの先生の得意顔が目に浮かぶ。 正確に言えばバッハの複雑精妙骨太なフーガのコピーではない。 「そんなシチめんどいこと書くより、こうすればいいじゃん!」 というようなフーガに対するイタリア的トランスクリプションである。 これが実に、なんというか、ツボを心得ているんですよ。 ま、天才を輩出したバッハ一族に対する、イタリアのスカルラッティ家の対抗意識が そうさせたんだろう。ん、なことはないか(^^) |
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