ヨメの骨折を期に 老検実力養成実践..
[団塊の段階的生活]

おじいちゃん検定(老検)実技 2 ホケ

2008/11/7(金) 午後 6:34
  病名:慢性硬膜下血腫
  症状:麻痺、痴呆


わ!痴呆だって!
わーい!とまではさすがに思わなかったが、多少はしゃいでしまいました。

朝、平気でプールに行きリハビリのつもりで泳いできた。
特に実名をあげさしていただくが「奈良社会保険病院」では「運動不足」と言われたのだ。
そんなはずはあるかい!

もっとも、うまく泳げず横のコースの波でもよろよろする始末。
プールから帰り、ヨメが電話で医療相談をしたら別の病院を紹介された。
その足でよろよろヨメに介添えしてもらってその病院行ったら、
即、車椅子にのせられCTスキャンをされ、いただいた診断が上記。

はしゃいでしまったのは、やっと納得のいく診断が得られたという落着感もあるが、
実はこの病院、なんと朝泳いできたプールの隣だったのだ。
朝泳ぎ、午後隣で入院というばかばかしさ。

「麻痺」は既に自覚していたのだけれど、「痴呆」とはね。
なにか痴呆という言葉にはどうしても「ほけ〜ぇ」とルビがふってある気がし、
現象の悲惨さとはうらはらに、ほんのりとくすぐられてしまう。

うむ、アレが「痴呆」ということだったのか。なるほど。
物忘れがひどくなり、言葉が出てこない。
事物の関係性がよくわからなくなって、冷蔵庫に書類を入れようとしたりする。

麻痺はちと困るのだが、正直に言うと痴呆はそのままおいといてもいいと思った。
実はホケるのが個人的には理想の老い方だったりする。

しかしまあ、個人だけで生きてはいないのでヨメにすれば迷惑だろう。
まあ、理想というのは常にそんなモンだ。

いずれにしても、もうとっくに現役を引退しちゃった御身分である。
のほほ〜んとホケられればこんな愉快なことはない。

深夜の病院の暗い廊下にそこだけ明るいステーションがあり、中で忙しくかけまわっている
看護師諸君を目にすると、現役だった昔の情景を思い出す。
深夜、もう誰もいない会社で必死に作業しているのだが、とうてい間に合いそうに無い。
徹夜してもまだ翌日の分が山積みになっている。

突然「ええいくそ、もうヤメてやるぅ!」と、叫んで逃げ出す瞬間をいくら夢想したことか。

しかし、今はそのような膨大な荷重から、うまく逃げちゃいましたよ。
勝手にホケちゃっても、ヨメ以外は、誰も何も言わないもんね。

私の場合、自分の理性が無くなっていくという仄かな自覚は、意外にもおだやかなものだった。
本当は理性なんか私にはもともと必要なかったのかもね。

無から来て、無に還る。
条理も不条理も全て無に還っていくのである。

原因が脳ミソの中にあったとは知らず、ここ2,3週間に進行した麻痺や痴呆は、意外に早くやってきた老化によるものと覚悟した。
偏頭痛はイヤだけど、麻痺も痴呆も何となく自分の属性として受け入れることができた。
ピアノが弾けなくなるのは寂しいが、数回ピアノの先生に面談して、やはりいくらがんばってもプロには負けると深く納得したこともある。
で、結構あきらめ切れるもんだ。
実際に弾いても音にもならないので弾く気にもならなかったし。

まあ、おじいちゃん初心者だから自分のホケを楽しめたのかも。

しかし、頭かち割られる手術はとても痛かった。
痛い上に頭蓋骨削られるゴリゴリ音や、脳ミソの汁絞り出される気味悪さは、
その種の趣味のある人にはこたえられないと思う。

「今度再発しても、もう手術せんでいいよ。麻痺や痴呆より手術の方がかなわん」
とヨメに言うと、「ホケたらかわいかったもんね」とヨメも納得。

実はあの時、ヨメと私の知性が初めて同じレベルで釣り合ったのかも知れない。

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