旅立つ前の産みの 「サントリー 一..
[団塊の段階的生活]

アチラ側へ、加速度一定

2009/11/8(日) 午前 9:57
昨年、私にしては大病で入院手術。
今春また入院し、いよいよアチラ側へ出発だい、という前景気をつけた。

で、ですね。
以降スポーツジムに通いだし、連日基礎体力涵養に努めている日々。
なんせ、アチラ側に行くにも体力、必要でっせ。

古典的ジョークを一つ:
 絞首台の上で、死刑執行人が言う。
 「最後にタバコでも一服どうかい?」
 すると死刑囚が応えて言う。
 「いや、健康に悪いのでやめとくよ。」

まあ、今更同じだろう、というのがこのナンセンスの主旨である。
しかし、最近考えてみるとこの死刑囚の態度には別に矛盾はなく、別にナンセンスでは
ないと思える。ただ、ちょっとブラックなだけで。

今の私バージョン:
 絞首台の上で死刑執行人「最後に何かやりたいことはない?」
 応えて言う 「ちょいとジョギングと筋トレしときたい」

ランニングマシンでの30分は、これはもう苦痛そのもの。
だいたい、私は身体を鍛えるなんて苦痛がイヤなので、筋金入りの純文科系人間をやっていた。
ジムのインストラクタに設定して頂いたランニング目標時間が30分である。

なんで自分からこんな苦痛に身をさらそうとするのか?
アチラ側に行くための体力涵養、と言えばちょいと楽しいレトリックなのだが、まあ、精神力の涵養
というのが本当のところ。

走り出して直ぐ膝の痛みが直撃する。
部品が古くなり、あんまり潤滑油もないからだ。
ところが5分くらい走っていると痛みを感じなくなる。
これは別に筋肉が膝関節をカバーするように助けてくれるワケではない。
この程度の痛みなら、かばわずに積極的に繰り返せば慣れてしまうのだ。

痛みが収まると、そろそろ走ること自体の苦しさが亢進してくる。
呼吸が苦しくなり、身体全体がこの状態をイヤがっている。
まだ5分経過しただけなのに、なんともヤワな身体であることよ。

この最初の10分間の苦痛の増進は救いようがない。
止めればすぐ楽になるのに、とわかっているのだが、今どうしても止めるワケにはいかない。
だって、まだ予定の苦痛量の半分にも達していないのである。
ここで止めればなんともブザマ。

身体の苦痛はどんどん亢進する。
加えて「まだ半分にも達していない」という心理的苦痛が、救いようもない、情けない思いを
上乗せしてくれているのである。

苦痛が加速度的に増加していく。
10分経過すると、なんだか苦痛の加速度が徐々に落ちてくるようになる。
身体の疲労と苦痛は一定に増加しているが、心理上の苦痛は軽減してくるようだ。
まあ、なんとか全体の苦痛予定の半分くらいにはもう達するだろう。

15分経過。
やっと予定苦痛量の半分である。
いままでの苦痛量をもう一回分繰り返すのかい?
まあ、今まで何とかできたんだ。
なんとか最後まで行けるんじゃ?

身体の疲労は相変わらず蓄積していき、汗も吹き出してくる。
しかし、苦痛自体が加速することはもう無い。
一定の苦痛が続いていて、止めれば楽になる、止めたい、という欲求も常にあるのだが、
苦痛の量は安定していて何とか制御ができている。

エンジンをトップに入れ、速度一定の安定走行になったということか。

おそらくここで全体の苦痛量の予測がついたのだ。
予測不能な苦痛ほど恐ろしいものはない。
しかし、どんな身体的苦痛も予測可能であれば心理上の苦痛は制御できるのだ。

20分経過。
もう後半である。
止めれば楽になるという欲求は相変わらずだが、今回も完走できるという予感は確実になる。
ここであと何分と、チラチラ時計を見てしまうのだが、これはいけない。
時計を見ると自分の予測よりあまり経過していないので、それが心理的苦痛をちょっと増加させる。
無心に走るべきだ。

もう確実に走り切ることができるとわかると、ほとんど心理的な苦痛はなくなる。
なんだか、身体の疲労もたいしたことではなく、自然に筋肉が動いている気もする。
身体の動きが自動化されると、意思で制御する努力もさほど必要ではなくなる。

25分経過する。
今回も予定量をこなせることは確実だ。
全体の苦痛量を耐えることができたという自足感も出て、苦痛を打ち消しにかかる。
まあ、楽ではないが、もう苦痛でもない。
どちらかいうと、汗が吹き出している自分の身体が誇らしい、なんてあられもない自尊の気も出る。

30分経過。
直ぐ止めたいが、余裕を見せてもう一分だけ、クールダウン。
勝利者の驕り、ですかねぇ(^^:
ふう、終わった終わった(^^/

アチラ側に行くためには、その苦痛を直視する精神力が必要だ。
その精神力を維持するためには、やっぱり一定の体力も必要、というワケ。

ふう、終わった終わった(^^/ と、アチラ側で言うつもり。

孤独にただ走行するランニングマシンの苦痛の30分に、苦し紛れにそのようなことを考えたり。


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