年頭の辞 - 人 イオンモール大和..
[団塊の段階的生活]

久しぶりに西村志保のチェロを聴きに行く

2010/1/7(木) 午後 7:34

 西村志保 〜 チェロの紡ぎ歌 

Vc:西村志保 Pf:高木洋子
2010年1月5日(火)兵庫県立芸術文化センター 大ホール

 
Program:
  エルガー:愛の挨拶
  ボッケリーニ:チェロ・ソナタ第6番イ長調
  フォーレ:エレジー
  シューマン:トロイメライ
  ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番
  カサド:無伴奏チェロ組曲より第3楽章
  カサド/グラナドス:インテルメッツォ
  カサド:親愛の言葉
 (アンコール)
  ショパン:チェロソナタ 第3楽章

ブリュッセルの西村が帰国し正月明けの兵庫県芸術文化ホールでリサイタルを開催した。
今回はこのホールが定期的に企画しているワンコイン・コンサートの一環で入場料500円。
気軽に聞けるコンサートということで、曲目も親しみやすい小品ばかりである。

久しぶりの西村のチェロ。
以前のコンサートではまだ半学生風(^^)の初々しさや、若者らしい意欲的な現代曲も聞いたのだが、
このコンサートのように、ふくよかなチェロの音色で親しみやすいメロディーを聞くことは
やはり純粋に楽しい。
西村のステージ姿も以前よりもふくよかで(^^)音色にも安定感が増していた。

このコンサートシリーズの性格か、演奏者が気軽にマイクを持ち一曲一曲紹介してくれるのも楽しかった。
西村がしゃべりをトチる度に肩をすくめ、客席に自然な笑いが起きる。
まさかウケねらいでワザとトチってたのでは?と勘ぐるほど、彼女の言うラテン系大阪人としての
明るさがステージで弾み、自然に演奏に接続していく流れも良かった。

フォーレのエレジーは、阪神大震災の被災者の方への鎮魂として演奏されれた。
まだ学生だった西村はバスの中にチェロを持ち込んだとき、たまたま隣にいたおばあさんが、
本当に苦しい時に心の支えになったのは音楽だったと言い、「学生さん、あんたもがんばってね。」
と激励したという。

西村は渾身のエレジーを弾き、私は涙の気配をかろうじて抑えた。
しかし、次の静かで回想的なトロイメライで目から溢れさせてしまった。

チェロという楽器の表現力には今更ながら驚く。
当初高音の輝きに隠れ、低音が貧しいかと思えたのだが、どうして豊かで朗々とした響きがホールに
満ちてきた。

カサドの無伴奏組曲では、一本の弦の音だけで全体の空気をピンと張り詰めさせ、精神の緊張感がホールを満たしてしまう、というようなことも起きる。

演奏者を前にして、その息づかいや、表現する何事かを身体で作り出す時に先ず現れる表情を目撃する
ことは、音楽のメッセージは決して音だけではないと思い知らされる。
最近、あまりコンサートに行くことがないのだが、西村の真摯で豊かな表情が音楽に付与する立体感を
味わうには実際の演奏を聞きに行くしかない。

カサドという演奏家の作曲家としての才能は以前のコンサートで既に教示してもらっている。

西村の師匠がカサドの弟子だそうで、カサドの作がかなり西村のレパートリになっている風である。
関西弁で語る西村の性格はスペイン風音楽の所作に合っているのかもしれない。
昔関西で活躍していた辻久子というバイオリニストのことを思い出した。
泥臭い程の関西風の歌いまわしで弾いていた。辻節とも言われていた。
スペイン音楽特有のこぶしやミエのきり方は、どことなく関西風に近いというイメージがある。
もはや中堅という年齢になった西村は、そろそろ自分の音楽の方向性を鮮明にしていく時期に来ている。
後半に置かれたこのカサドの作品群がその回答であるのかも知れない。

ほぼ一時間の和やかで爽やかなコンサートが終わる。
500円で音楽を聞きに来た人は本当に音楽を楽しんでいた。

何千・何万も出して数時間の苦行を我慢しているような、何しに来てるのかわからん客を目撃するのが
イヤなのが、最近あまりコンサートに行かなかった理由の一つでもある。
義理や見得でクラシック音楽を聴きに行くのは、傍迷惑。いい加減にして欲しいよ。

500円ならもし音楽が気に入らなければ途中で帰ることもできるし、この料金では見得で来る人も
ないだろう(^^;

木の木目の温かみに包まれたホールの暖かみもこの演奏会にふさわしかった。
なんやかやで、非常に気持ちのいいコンサートだった。


ヨメが初出日で同行できず、急遽ヨメの知人にチケットを回したのだが、初めて西村のチェロを聴いたこのド尼崎人からも、本当に素晴らしいコンサートだった、と是非本人に言っておいてくれと念をおされてしまった。

そういえば、やはり何年か前の1月5日だったっけ。
当時危機状態だった女性とこのホールの演奏会に同行し、奇跡的な逆転劇が生じ、まさかの結婚にまで漕ぎつけたイキサツがある。今のヨメである。

終了後のロビーで答礼に出ている西村と少し談。
実際に会うのは10年ぶりくらいにもなるんではないか?
この間結婚もし、ヨーロッパのオーケストラの首席を務めている堂々たる演奏家である。
まあ、私だってこの間結婚したが、たいした何者にもなれず、はやばやと現役引退した身には
多少まぶしすぎる再会だった(^^;

今は無き梅田のNOVAのフランス語ボイスに遊びにいって西村とよく喋った。
フランス語のノリがよく似ていて話が弾んだ。
で、私は西村志保後援会奈良支部の支部長を自称していたりした。

ガスパール・カサドのことでも西村と共通の思い出がある。
知り合って間もなく、私がドボルザークのチェロ協奏曲のハードカバーのスコアを持っていたと話した。
ポケットスコアではなく、A4版のしっかりした製本。
今では考えられないが、これは昔のSPレコードの同梱品なのだ。
音盤4・5枚組で立派なケースに入り、解説とオーケストラスコアの冊子付きで販売されていたのだろう。
このレコードの演奏者がカサドだった。
もちろん、堀口敬三だったか野村あらえびすだったかの解説に原千恵子と結婚し云々というようなことも書いてあった。逆にだからカサドのレコードだったと判るのだが。

その後、このスコアは私の手元から散逸しちゃったのだが、何と西村が同じものを持っていると言うのだ。
たぶん、私の手元にあった同じヤツの可能性が高い。

他にもちょっとした偶然の一致もあるのだが、まあ、このくらいにしておこう。
とにかく、新春早々久しぶりに古い友人の西村志保のチェロ演奏会をたっぷり楽しめた。
今年は多少いいこともあるのかね(^^/


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この下に西村のコメントが本来あるはずだけど、書込み不可モードになってたそう。
まあ、しゃあない。  西村志保のブログ

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