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[団塊の段階的生活]

ベトナムで暮すということについて

2017/2/3(金)2:18

もう2月になってしまった。
2月には「ベトナムで暮らす」というほのかな予定を頭の片隅に飼いながら昨年一年過ごしていたわけだ。
今年はもう少し長期に滞在し、ゆっくり生活の基盤を作っていこうとも思っていた。
とりあえずは2月一杯。
今年は滞在ビザも取得して・・・。

「で、ベトナムどうするん?」
「え? ああ、行くんだろう。」
なんて一月になっても他人事のような返事をしていたりした。

この時私は自分が「予定を組む」ということが全くできない心理状態であるのを自覚した。

いや、本日の予定くらいは考えられる。
週末の予定くらいは立案できるだろう。
しかし、ひと月先の旅行なんて・・・
もう死んでいるかも知れない?
いや、そんなはっきりした未来拒否ではなく、一カ月も先でもこの生活を維持し、同じ私の人生をやっていることを前提にしなければいかんのが・どうも・うっとおしいのだ。

自由やないな。
では、同じパターンの生活がこの先も続いていくのか?
旅行を計画するということは自分で自分を今の自分に縛り付けることじゃないか。
予定するということは、未来の自分を担保にしないとできないことなのだ。

まだもらっていない先の給料をアテにしているような。
今ある金では処理できなくて借金で賄うような。

イヤな感じ。
先の予定なんか、考えたくもない。
未来の自分に今の自分が責任を負わされるような。
もうどんな責任も負わされたくないのだ。
もう自分は自分で、これからも自分だと言い切れる根拠も自分にはなく。

ま、なんせモラトリアム人生だからな。

しかし・それでも・ベトナムには行かねばならない
何故ならそう決めたんだから。

しかたがない。
恰も外部から依頼された賃仕事のように、進めない訳には行かない。
何も考えず、決定事項を「淡々と」政治家風に言えば「粛々と」進めて行く以外にない。

ベトナムの滞在ビザは堺市のベトナム領事館に申請すれば交付されるようだ。
しかしビザ申請にはパスポートの有効期間が6ヶ月以上残っていることが必要?

私のパスポートは今年8月で失効してしまう。
では、先ずパスポートの更新をせねば。

一月第二週、県庁の旅券窓口に更新申請手続
数日後の指定された日に受領に行く。

次にこのパスポートをベトナム領事館に送付、30日ビザの申請をする。
会員になっているスポーツクラブで2月中休会の処理をする。

今回は一カ月の余裕があるので飛行機は往復切符ではなく、片道だけを手配し、後は現地の滞在情況で復路の経路や日付を決めればいい・・・
って、そこが既に先ほど来のモラトリアム風予定決定回避心理じゃないか。
しかし、ビザが発給されパスポートが手元に届くまでは飛行機の切符を手配する気にはなれない。
二月一杯の予定で、ビザの開始日を一応2月1日としたのだが、郵便事情その他で遅延することもあるなら、2月1日のチケットを購入するのはリスクフルだ。


1月27日(金)
ベトナム領事館から予想外の早さ、わずか3日後なのに宅急便が届いた。
しかしビザではなかった。

「1月25日にビザ申請を受領。しかしベトナム領事館は26日から2月1日まで休暇で業務を行わない。従って2月1日発効のビザは発給できない。」との文面と、パスポートと代金が現金封函封筒のままで送り返されてきた。

実はビザの発効日付は目安だと思い、キリのいい2月1日として申請したのだ。
しかし、在日領事館の休暇を考慮するのをすっかり忘れていた。
ベトナムも旧正月(テト)が重要な休暇期間の国なのだ。

この時、一挙に時間が動く。
ビザの申請をやり直すには今度は実際上の入国日を決定しておかねばならない。
では、とにかく航空券を確保してから。

やっと、強制的に緊急至急仕事モードになった。
大手航空会社のベトナム往復はこの時期最安値7万。
しかし、LCC(PeachとVetjetair)を組み合わせれば多分片道2万までで可だろう・・・

ここでやっと2月初めが中国圏では春節の民族大移動期であることを思い知った。
普段は3900円でも購入できるハズの台南分便ですでに2万を越えている。
台北はもっと高い。上海もしかり。

迂闊だった。LCCはひと月前購入ならかなり安いのだが、直前、しかも春節休暇中の便なら3万に跳ね上がってしまっている。
ベトナムのLCC、VetJetairの路線がある空港までPeachで繋ごうとしていたが、そのPeachが想定外の高値だった。
唯一、釜山便が一万以内だった。
釜山→ハノイのVetJetairが1万5千。
もうそれしかない。

決定して、双方のチェケットを二画面並行して購入手続きをする。
手間取っているうちにPeach釜山の最安値のチケットが無くなり、計1万5千の切符しか残って居ない。
仕方がないPeach釜山便購入手続き完了

並行して操作しているVetJetairのサイトがエラー続出になった。
クレジット番号が違う、いや、そんなハズはない。
カードを替えても一回目はすべてエラーになる。
最初からやり直すとカードは通ったが、購入決定ボタンを押すと「既にこの席はBook outである」とのエラーが出る。
何回トライしても同じ。
いい加減にしてくれ、すでに釜山便は買っているのだ。
ここで海外旅行につきものの対処不能感にみまわれ、パニック状態。
ああ、やっぱり海外旅行なんだなぁ・・・とヘンなところで旅行中気分も(^^;

結局VetJetairのチケットは購入できなかった
もしかしたらやはりテト休暇中のシステムメンテナンス停止中というような状態だったのかもしれない。

もうどうしょうもない。
やはり春節期間中に近隣諸国に行くのに直前手配では無理だったのだ。
昨年のベトナム滞在はヨメに警告もされ、テト期間を避けて設定したのだった。
すっかり忘れていた・・・(^^; ( ;∀;)

手元には返金不能の条件で買った釜山便のチケットだけが残ってしまった。
釜山日本領事館前の「少女像」でも見てこようか、とも思うのだが。

かくてベトナム行きが向こうから難儀を押し付けてきた。
航空チケット購入でネット画面を次々切り替えながら、あ、やっぱり・ベトナム行きは無い・のか・・・とすでに心の中では思っている。
そうか、一カ月先の予定はもう立てなくてもいいのか・・・

   私は開放されたのだ。 

何か安堵の念が、無駄になろうとしている釜山便チケット代金の負荷よりも・・・

午後、ネットで他の可能性を検索することを停止。
検索画面をそのまま、まだ会員資格の残っていスポーツクラブに行く。
夜、ストーブを焚き、炬燵に足をつっこんでくつろいでみる。
正月休みの整理整頓でわが家の居間もいつになく居心地がいい。

このまま何もしないで寝ころんで夜を過ごしてもいいんだ。
もう何もパニックになってまでやることもない。
考えてみればベトナムまで行ってリセットしなければならない程の社会性ストレスは今はない

思いもかけない安堵の念。
そして幾分かの高揚感。
高揚?
ああ、そのようだ。
どちらかというと胸がうずくようなユーフォリーかも。
酩酊感。
今もしかして私は幸せなのではないか?

何も焦ることもない
何もしなければならないということもない。
したくなければやらなくともいい。
それでいて別に生活が苦しいわけでもない。

もしかして今、仄かに立ち上ってきているのは幸福という?

ベトナムに行こうが、行くまいが、私は好きなように生きていればいい。
まあいやぁ、死んだって別にかまわんのだ。
まったく無責任に生きていてもいい、という幸福感。

      いつ死んでも別に、という圧倒的な自由

この思いもかけず湧き登ってきたヤツを「幸福」というなら、これは記録しておいてもいい。
この10年来欝もどきの重苦しいヤツが絶えず私の後ろに控えていた。
しかし、たまにはこうして後ろのヤツを正面から睨み、にとぉっと不気味に笑ってやることもできたりするのだ。


「で、それで釜山へは行くん?」
「え?ああ、多分行かんだろ。 別に海外に行かなくともリセットできるようだし。」


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