アヌシー・シャモニー・ロンドン .. アヌシー湖一周サイクリング
[アヌシー・シャモニー・ロンドン]

曇天のパリから夏のアヌシーへ

2016/7/22(金)2:6
2002年8月20日(火)

ソウル・インチョン空港
当時、格安航空券といえばKALだった。
ヨーロッパへは殆どソウル経由だったが、2001年開業の仁川国際空港(インチョン)はまだ新しく、やたらと明るくモダーンな感じだった。

夜パリ着。
Gare de Lyon の ibis ホテルに投宿。
この頃のibisは星二つ扱いで、手頃なビジネスホテルというようなイメージ。
しかし、このパリの繁華街にあるibisは若干高かったという記憶がある。
東駅やサン・ラザールではなかったのは当初からフランスアルプス方向に周るつもりだったのか?
ストラスブールに行くつもりなら東駅だしイギリス方向に向かうならサン・ラザール。

パリで過ごすつもりはもとなかったが、ただ音信不通になってしまった女友達の手紙のパリの住所は持って行った。

8月21日(水)
翌日、とにかくメトロでセーヌ河畔のその住宅地に行ってみる。

Rue Adrian hebroux , Paris 最後の手紙の発信地はこのアパート。

玄関のちょっとしたポーチ扉の横の住居表示にはもちろん名前のプレートはない。
学生の住まいなら屋根裏部屋に決まっている。
こういうアパートメントでは正式な住民プレートはない。
とにかく中に入ろうと、ポーチを少しガチャガチャやっていると上から声。
2階のベランダからコンシェルジュらしき夫人が私を誰何。

"Melle XX est la? Je suis son ami."
「XXさんいます? 友達なんですが」
夫人は「ああ」とかいうようにうなずいたようだった。
”Elle est partie, ce Printemps... "
「もう出ていきましたよ。 この春。」
「え?どこに?」
「私にはわかりません。」

音信不通だったが単に返事をくれなかっただけかもしれない、とも思っていた。
しかしこれではっきりした。
もう新しい住所も知らせず、私の前から消えてしまったのだ。


エッフェル塔の上は雲に隠れている。
いかにも重苦しいパリの曇天。
また一人、かけがえのない人が消えていった。
この地で10年も遅れてやってきた私の学生時代。
私の最後の青春期を共に過ごした人。
パリの曇天の下、永遠に消えていってしまった。

・・・
パリにはもう何の用事も未練もない。
リヨン駅からアヌシーに発つ。

どうしてアヌシーなのか覚えていない。
昔1982年春に初めてフランスに渡り、学生生活を始めたのはグルノーブルからだった。
リヨン方向から言うとグルノーブルの向こうにアヌシーがある。
ちなみにアヌシーとは湖の名前でもある。
有名な観光地で、グルノーブル滞在の若い留学生連中の間では「アヌシー詣で」あるいは「アヌシーに悩みに行く」とかいうセリフが流行っていた。
週末に湖のほとりを散策し、失恋の痛手を忘れに行く・・というようなニュアンスだった。

私が直接シャモニーに行かずアヌシーに向かったのはそんな記憶からか?

アヌシー駅で降り、水路のほとりにあるibisまで歩く。
駅前のビストロでコヒーを飲みながらゆっくり歓談している人が目に入る。
からりとした快晴の夏の気候が支配していた。
観光地のにぎわいに心が感染してくれる。

ホテルibis Annecy。
定宿のibisだが、この地のヤツも少々高めだったか(^^;

ホテルから水路伝いに歩くと、いかにも夏のフランス・ローヌアルプスの有名観光地風。

いたるところに花が飾られていて美しい。

そして湖越しのローヌアルプスの山も見え隠れしてくる。
アヌシー湖の桟橋近辺のテラスには夏の観光客がぎっしり。

湖と山と遊覧船。

これでいい。もう曇天のパリのことなど・・。

これが夏の旅行という典型的なイメージ。

素早く観光モードスイッチ・オンで記念の自撮り。
被っているのは2000年のベルリンフィル大阪公演(フェスティバルホール12,4 クラウディオ・アラウ指揮)で買ったベルリンフィルのスタッフ帽。

アヌシー湖の上に見えるのが典型的なローヌ・アルプスの岩肌丸出しの若い切り立った山。

1982年、グルノーブル大学キャンパス越しのローヌアルプスの山並み →
上と同じ山の反対側からの眺めだろう。多分。
もし同一ではなくとも、山肌の切立ち具合はまったく同じ。
一目見たとき、グルノーブル時代、毎日見ていた光景を思い出した。

アヌシー湖を周回するサイクリスト。
そうか、そういう手もあるな。

更に、そのまま湖を周遊する遊覧船に乗り込んでみる。

どうだ、これで見事に観光モード(^^)



 この中央の女性は盲目だった。

盲人が湖周遊の観光遊覧船に?
この空と山と湖の光のコンポジションは見えないのだが、水の気配や水面を渡る風、音と船の走行感覚はしっかりと感じているのか?

絶えず柔らかい微笑を浮かべていたのが印象的だった。





アヌシーの町へ。






夕食に何を食ったのか覚えていない。
多分、湖の周囲の艀近くのレストランテラスでピザあたりだったか。

曇天の重苦しいパリから真夏の晴天のアヌシーへ。
この劇的な気分の変化の記憶が、7年後、雨が降り出しそうなパリからエクセレバンに行く旅程を選択させることにもなる。( => 「所用でパリ・フランクフルトでバイク」)

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