バイク屋、楽器屋に行く.. (番外1) ブルゴーニュに・.
[ストラスブール通信1]

    ただ町を歩く

2008/2/9(土) 午前 3:57

ストラスブールのトラムシステムは非常に便利だが、大した距離を結んでいるわけではない。

朝の登校時や見学に参加する時にはトラムを使うが、放課後はぶらぶらと郊外の住宅地を歩いて帰ることも多い。



市内はさすが中世から続く古い都の趣があるが、郊外の住宅地では普段の生活の匂いが漂う。

観光観光したアルザス様式の家はない。
しかし一戸建ての意匠はそれぞれ凝っていて色合いも豊富。

集合住宅の色もさまざま。

郊外の何のへんてつもない住宅地を歩くとき、強烈なノスタルジーが襲ってくる。
市内を歩いたときに感じる、ほのかな悲しみではない。





この都市の大学周辺でかなり遅めの学生生活を始める前や、それ以降もずっと、私はヒマがあれば自転車で郊外を走り回っていた。

そして基本的には私はヒマだったのだ。

10年間のサラリーマン生活を清算し、全てを売り払い、この地にやってきて、
自転車で一人、ただ郊外を走り回っていたのである。

今から思えば、私は 「外に自閉」していたのだった。





その時も多分、この雑多な家並みの中にまぎれ暮らすことを思ったに違いない。


どことも知れない外国の家並と生活。


今通っている学校周辺も、見学に行ったハイネケンの工場のある町もすべて、どこか見覚えがある。




すべてを捨ててここで暮らし、一人で自転車で通り過ぎた町が現在の私の前に展開する。

過ぎ去った日への強烈なノスタルジー。

私は「釜ヶ崎」との異名がある大阪の超ド級下町の産である。

故郷と呼べる甘さはまったくなく、また放置土管の脇にセイタカアワダチソウが茂っていた空き地も、もう当然ながらあとかたもない。

それでもいい。

それでは今、この地の過去からやってくる郷愁を根拠に、ここが私の故郷であると同定しても、ストラスブールにはもはや異論はあるまい。



今回は観光旅行ではなく、一応「極超」短期留学の滞在型旅行だった。
こういう滞在型旅行を心ゆくまで堪能できるとき、しみじみと

    「会社辞めてよかった・・」と思うのである(^^/

流通科学大学の今西準教授(観光政策)によれば、「ラケットの原理」と称する旅行者の行動パターンがあるそうだ。
人は「遠くに行くほど行動範囲が広くなる」というハナシである。

心理的にはよく分かる。
一昨年の旅行では、フィンランドのヘルシンキからバルト海を夜横断し、ノルウェーのスタバンゲルまでの北欧を一日で横断してしまった。
せっかく来たんだから、できるだけたくさん見なきゃ、ということだ。

しかしもう急ぐまい。
道を走らねばならない しがらみはもうないのだ。

今は異郷にじっくり腰をすえ、内なる自分への旅を楽しもう。


・・・なんてっちゃって、明日からブルゴーニュ、リヨン経由でパリ。
オープンジョーあり、途中降機一回無料のエア・チケット。
有効に使うにはかなり忙しい(^^;

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