今回の「極超」短期語学留学(^^)学習成果報告でございます。
(1)

事前に提出したテストの結果で適当なクラスに振り分けられた。
クラスメートの印象は、発音はヘタ、語彙は貧弱で、どうも実力よりもレベル下のクラスに入れられたか、と思った。
しかし、時間を経るにつれ、貴ヤツ等の理解力や発話能力はかなりのものだ、と思わざるを得ない場面に遭遇、彼らへの過小評価は完全に修正を余儀なくされた。
時として私には意味のとりにくい講師の発話が彼らには理解できていたり、逆に私には理解しにくいヘタな彼らのフランス語が講師にはよく理解されている、という場面に出くわす。
結局、ヨーロッパ言語の発話者の間では、発想や文の組み立てが類似しているので、類推がしやすいのではないか、と考えたのだ。
つまり、発音が悪くても発想や構文が簡単に類推できれば別にコミュニケーションの障害にはならないのではないか。
私は発音が苦手である。
自分の発音を録音して聞くことほどの苦痛は虫歯の治療に匹敵するくらいだ。
自分ではちゃんと発音できているつもりでも、客観的に聞いてみると明らかにカタカナである。
とても・きもちわるくて聞いてられない。
私は別にカタカナ標記の教科書や辞書で勉強したワケではない。
それどころかいきなりフランスに行き、フランス語を習ったハズである。
だから、本場の発音になってなければいけないのに、自信たっぷりで断固としていうが、決してそうなってはいない。←きっぱり!
結局、私の聴覚は日本語の音しか正確にキャプチャーできず、すべての外国語をカタカナ音としてしか記憶できないらしい。
その証拠に未だにRとL、VとBの区別が自然にはできない。
発音するときには意識して唇と舌をそれらしく用いれば違うように発音はできるかもしれない。
しかし、肝心の発音する単語のスペルが記憶の中でアイマイなことになっていて(^^;結局間違えて発音しているケースが多い。
なんともなさけない。

(2)
しかし、発音はかなりひどいのにコミュニケーションには支障がないというケースは多い。
わがクラスの諸君の例を持ち出すまでもなく、町で聞く普通のヒトの会話も、かなりひどい発音である。
私はテレビの衛星放送で放映されているFRANCE2のニュースを欠かさず見ている。
アナウンサーの発音はもちろん聞き取れる。
しかし、インタビューされている「普通のヒト」の発言が聞き取れないことが多い。
これは日本語でも言えることだが、普通の日常会話で放送アナウンサーのように正確に発語しているケースはかなり少ないと思える。
やたらと早口なので、一つ一つの単語の発音なんていい加減になっている。
地方のなまりやその社会階層特有の崩した発音を常用しているケースもある。
標準フランス語しか学んでいない我々標準外国人学習者には、お手上げである。
町での会話は教科書的標準ではありえない音にあふれているのだ。
どうして母国語発話者間では崩れた発音でもコミュニケーションが取れるのだろうか?
ひとつには慣れがあるだろう。
しかし、それだけではないハズだ。
実際に日本語のケースを考えると納得がいくのだが、正確な発音で完全な文章で喋ることなんて日常会話では誰もしていない。
適当に自己流に発音を崩し、文章要素をはしょって会話しているのである。
どうしてそれで相互理解が可能なんだろうか。

今回の旅行中、リヨンからの飛行機内でフライト・コンパニオンに「何か飲み物は?」と聞かれビールを注文した。
缶入りハイネケンとプラスティックコップを渡され、口の中に入るビールの刺激への予感に頭を奪われた時、突然フライト・コンパニョン嬢に何か言われた。
もう質疑は終了していると思っていたので、発言に注意していなかった。
これでは聞き取れない。
ビールに気を取られていた頭の中空を、耳から一塊の音としてフランス語がさっと通過していった。
え?それ、どういうこと?と私はあわてる。
通過していった音塊のシッポがちらりと見えた。
「サレ」と最後に言ったようだ。
うむ、フランス語だと"sale"だろう。「塩辛い」か。
とここまできた時、全体の文脈が頭の中で合わさり、突然意味が見えた。
と、同時に全体の音塊がフランス語の文章として頭の中で組み変わった。
そしてフランス語として全体が理解できた。
"Avec un sable srcre ou sale?"(で、一緒に甘い菓子か塩辛いのはいかが?)
と聞かれたのだ。
この間約0.5秒。
そして「Sucre、s'il vous plait!」と返したのだが、このくらいの空白なら相手は「どちらにするか、ちょっと迷っている」と捉えたはずで、まさかフランス語が聞き取れていなかったとは思わないくらいの時間だろう。
音を聞いた時にはフランス語として認識できなかった。
しかし、意味が予測できれば完全に聞き取れるのだ。
音としてはすでに消えてしまっていても、一瞬にして逆算し、正しい文章として「聞き取れる」。
私がつたないフランス語を発するとき、時として理解不能の顔つきを返されるのは、発音のマズさだけではない。
喋っている文章の構成や用語の選択、内容自体も相手の予測の外にあるからだろう。
少々発音がマズくても、しっかりと通常の会話でおこなわれる「発想」「用語や言い回し」「文章の構造」になっていれば相手が補足して聞き取ってくれるハズだ。
(3)
たとえば、電話があったということを誰かに伝えるとき、「すみません、・・さん。私はあなたに、どなたからかの電話があったことをお伝えします」と言ったって多分理解されないだろう。
この場合は一言相手に向かって
「Monsieur・・、Telephone!」
(・・さん、電話!)と怒鳴るのが普通。
この例は実際に目撃し、なるほどな、と思った。
古典的な例を挙げる。
トイレの外からノックされたとき、「すみませんが、今、私がこのトイレを使用中です。
しばらく待つか、他を探していただけませんか?」という文章を捏造してはいけない。
手か足で内側からドアを叩き返せばいいのである。
トイレをノックした人は「反応がない」か「反応がある」か、どちらかだけを予測しているワケで
反応の内容は全く関係がない。
まして正しい文章の解答があるなんて予測していない。
私は今度都合よく誰かがノックしてくれたら、中から「Entrez!(どうぞ!)」と怒鳴ってやろうといつも楽しみにしているのだが、やはりとっさの場合には言えない。
今回も一回だけトイレの外からノックされたが、反射的に「Ocupe(入ってます!)」と怒鳴ってしまった。←このくらいの慣れはあるのだが(^^)
会話というのはかなりの部分は定型の言い回しを使用して反射的に行われるものだ。
勝手に通常ではない構文や用語を捏造したり、流れに乗らないリズムで反応をすると、とたんに怪訝な顔をされてしまう。いや、もううんざり。
だから、日本に居住している私が今からいくらがんばっても(まあ、私ががんばるワケはないのだが^^)一生外国語会話がラクにできるようになるハズはない。
せいぜい、発音を正確にするように気をつけて、本来言わんとしていることまで誤解されないようにするくらいが関の山か。
学ぶことは自分の不足を確認することに他ならない。
不足を補う更なる設備投資は常に必要だ。
予算の折衝にがんばらなきゃ(^^)
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