東近江 大正池・玉川森林王国

 曽爾・香落渓 [奈良]


'07 8月21日(火)
(8月21日火曜日)
昨夜はチーズフォンデュ♪
朝食の食材が豊富に残り、野菜サラダを保存用パックにつめ、パンをラップしていると
自動的に昼食ができてしまった。
しかたがないので弁当持ちで一日ツーリングと行くか、と行き先も定めずバイクに乗った。

「とりあえず」自動的に向かうルートは決まっている。
名阪天理東インター→(針テラス)→小倉インター =>広域農道「やまなみロード」。

この速度制限表示のない快適な山間の2斜線舗装道路は、適度なアップダウンがある理想的なワインディングで、しかもほとんど交通量がない。
見事な杉林の間から道路の傾斜や角度に応じて、うっとりするような雄大な山々の姿が見え隠れする。
昨年バイクを始めて、初めてこの道を走行した時の幸福感がよみがえる。

途中、サイクリストの一団とすれ違う。
一人だけ遅れて、懸命に追いつこうとしているメンバーがいる。
バイクを始めなければ、このような景観のダイナミズムを楽しむには大変な苦労が必要なんだ。
メンドくさがりの私なので、絶対にこんな山間までハイキングに来ることはないのは自明。
バイクがどんなに私の生活を豊かにしたか、改めて感謝。

欲をいえばスイスアルプスのような雪冠をいただいた山であれば最高なんだが。
まあ、ここはただの奈良県、コストパーフォーマンスを考えれば格段の得^^/

「やまなみロード」は終点で国道165号線と立体交差していて、そのまま走れば室生寺へ最短の直線道路だが、後半が長大な室生トンネル(1740M)で面白くない。
国道165号に降りてしばらく桜井方向に走り、田舎県道28号をたらたらと室生寺に向かう。

室生寺周囲のみやげ物屋さんの隣にあった上行きの道の案内に従い「室生山上公園芸術の森」に行くが、火曜日定休日でゲートが閉まっていた。
オトナ400エンなり。
なにやら「アート」しているらしいが、目的のないツーリングなので入って見たくもあったが、休園日で400円セーブできて良かったと思う心もあり^^。

室生寺を過ぎ室生龍穴神社の前にある立派なトイレでトイレ休憩。
しばし今後の身の振り方を考える。


このまま県道28号をたどって曽爾村に行く、と今後の人生の決断をする。

曽爾村はソニーとは別に関係ないらしのだが。
響きがなかなかユニークですね。
奈良県の村では観光開発にかなり成功した山岳リゾートである。

交通の便が悪く、バイクに乗る前の時代に一度三重県名張市経由の近鉄電車で行ったことがある。
そのときは曇天にもかかわらず、秋の観光客がぞろぞろ一杯で、秘境を期待してたのだが、遠くに行った割にしょーもなかった印象である。

バイクを始めてからは直線的に行けるようになった。
そんなに人跡未踏の秘境ではないのである。
でも、明るい山間の村で、観光客の群がるススキで有名な曽爾高原以外にも面白いところはたくさんあるだろう。
今日はソノあたりを探訪してやろうなんて考える。

県道28号室生−東吉野線は何度も走行しているので、今回は途中で黒岩地区に行く側道に折れる。
怪しげな田舎道である。
こういう道はどこに出るのかという楽しみがある。
実は単に曽爾村へのショートカットだったのだが。

いや、ありました。
探訪スポット「屏風岩」。
「⇒屏風岩」の表示に従い、更なる山道を登坂する。
上りきりついに「屏風岩公苑」に到着。
平日故か、人影なし。
「公苑」といってもトイレの設備と、自然の切り株を利用したイスがそこかしこにあるだけの空き地風である。
ただし、屏風岩の景観は見事。
この写真ではあんまり迫力はないが、垂直に切り立った岩肌が左右に連なっている。
穏やかな日本の山にしては荒々しい力強さがある。

ふとフランス・スイス国境あたりのアヌシー湖周辺の山を思い出した。

つでに(アヌシー湖:2002年夏撮影)・・・やっぱりかなり違うか^^;
ま、コストパーフォーマンスからすると「屏風岩」の勝ち。

反対側斜面からの眺め。
芝生は曽爾高原。

ここで折りたたみイスに寝転んで昼食。
読みかけの新書を読んでしまい、ついでに仮眠。

いやぁ、折りたたみイスのおかげで公園で仮眠できるって、快適快適。
夏のツーリングでは昼下がりは仮眠しなきゃ。

午後、すっきりと次の探訪スポットを物色。
適当に道案内を見ていると近くに「済浄坊の滝」「クマタワ峠(トイレ)」とゆーのがある。
そこで林道もどきの道を「クマタワ峠(トイレ)」を目指して分け入る。
なかなか風情のある半舗装の道だったが、急に林道になり、ついにはハイキングコースの土道になる。
バイクで入り込める最深部に「クマタワ峠」という掲示があった。

東海道自然歩道の看板もある。
自然歩道というにはあまりに誰も通行しようもない山奥のような気がするが?どうなんだろうね。

しかし、峠という名にしては眺望は何もない。
ログハウス風トイレがぽつんとありました。
せっかくなので昼食後の用便をさせていただきました。
しかし水道もなく、かなり荒れた印象のトイレに入るより、人気のない山奥なので近くの茂みのほうが快適ではないのかとの疑問がふつふつと沸き、しばらく人生の岐路をさまよった。
しかし、紙をつかうなら人工のトイレにすべきであろう、との結論を得、事なきを得た。

また林道を引き返し、途中の「済浄坊の滝」との表示のあるスポットに帰ると先客が2組ほどあり、自動車が止まっている。
滝へは道端の階段を下りていくらしい。
降りていくと渓流沿いにハイキングコースが設定されている。
非常に鄙びた印象のある渓谷コースである。
近くにある赤目48滝の景観の豊饒さとは比較にはならないが、静かで人を寄せ付けない 自然の怖さもちょいと感じることはできる。
渓流をたどること20分くらいでちょっとした滝つぼに出る。

←「済浄坊の滝」
このまま渓谷を下るルートもあるようだが、バイクを上道に置いてあるので引き返す。
かなり汗をかいたのでTシャツを着替えていると、追い越した先客の一組の老人カップルが 帰ってくる。
軽のバンで自由に移動してハイキングを楽しんでいる風情だった。
ちょっといいなぁ。
バンに乗り込んで出発しようとしているのを見送っていると、おじいさんと目があったので会釈。
ちょっとした仲間意識か。

林道を下り、やがて県道81号曽爾-名張線にでる。
清漣寺川を渡り、対岸の山並みの曽爾高原に向かう。
快適で完全に舗装された道路は一直線に曽爾高原に上りっていき、上り詰めたと思ったら有料駐車場で、料金所前でイスにすわった係員のおばあさんがにたにたと手招きしている。

曽爾高原に入るにはこの駐車場に停めなければ入れないような構造になっている。
ん、じゃ、と当然のようにユーターンし、別方向の下り道をたどる。
案内図をみると「多目的広場」とあるところまで行く。

何もない単なる空き地だった。
ま、記念撮影。
後ろの傾斜地の薄く見える芝生が曽爾高原(の一部)。


元来た道を下り、途中のファームガーデンで休憩。
道の駅風の複合施設でレストラン・売店・ビール醸造所等があり、温泉もあった。

うむ。
では温泉に入ってやろう。
で、「曽爾高原お亀の湯」。
入浴料金500円。
室内の岩風呂と露天風呂等がある。
ちょっとぬめりけのある湯である。

少し前に渓流歩きの後、ですでに着替えてしまっていた。
温泉があるなら、ここで汗を流して着替えたらよかった、と思ったが、計画性のないツーリングなので後の祭り。

入浴を終わるとすでに5時。
そろそろ帰路を決めなくては。

普通に帰っても面白くないので県道81号から三重県名張に抜けて帰ることにする。

青蓮寺川の渓谷に沿った非常に景色のいい県道で、あまり道幅がないので大型車は走行できない。
乗用車も対面通行待ちが随所にあり、たらたらと鼻歌交じりに走行できるのんびりした道である。
地図で見ると香落渓という景勝地マークになっている。

走りながら思い出してきた。
あの時、バイクに乗る以前、名張からこの道をタクシーでたどり初めて曽爾高原に行ったんだった。
そのときの相手は確か現在のウチの奥様だったな。
ふう。
よかったぁ^^;

近鉄の駅で降りるとすでにバスは出た後だった。
駅前で悩んでいると、同じように迷っている二人連れがいたので相乗りを申し出た。
そうだった。
途中の渓谷の眺めが良かった。
ぬかるみの曽爾高原よりよほど良かった。

いやぁ。
思わぬところで埋もれていた記憶が立ち戻ってきた。
あれから紆余曲折の末、やっとウチの奥様と結婚したんだなぁ。
とすれば、この初期のハイキングの記憶もなかなか貴重な発掘である。
当時はカメラも持ってなかったのだった。


以前、電車を乗り継いで行った場所をバイクで再訪するのは二重の感慨がある。
私は今までの生涯を通じて車に縁がなく、アウトドア派でもなかった。
長い間(基本的には)独身の一人暮らしをしていた私のような出不精の男の場合、同じ奈良県に在住しているといっても長谷寺や室生寺、曽爾高原を訪れることはない。
おそらく一生に一回くらい、そのとき特別だった誰かと「どこかに行こう」といって電車の切符を買うのが関の山ではないか。

だから、各地名は一回限りの特別な思い出と緊密に結びついたまま、記憶の底に沈んでいるのだ。
それはそのまま私とともに朽ち果て、2度と明るみに出ることはない。

バイクで簡単に名所旧蹟に行けるということは楽しいことだ。
そして、二度と回帰することが無かったはずの記憶を読み出してきたりもする。

一方では電車を乗り継いで行った特別な日のかけがえのない記憶が、慣れふやけて日常化してしまい、単なる見知った景色となってしまうのは惜しいもんだと、ふと思ったりするのである。

名張から国道165号経由で帰宅。
午後7時。
いそいで飯食って、プールに行く。


origin: [曽爾・香落渓] 2007/8/22(水) 午後 2:53
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