平湯 蓼科

 上高地・松本 [長野]


'12 4月30日(月)
D3 4月30日(月) 平湯野営場 → 松本スーパーH
早朝4時半、飛び交う野鳥のさえずりで眼が覚める。
5種類くらいか。それにしてもいろんな鳴きかたをするもんだ。
 
半覚の脳髄に野鳥の声を流し込まれると、我々のものではない音階なのに次第に左脳が意味を勝手に付与し同期しはじめる。
 
私は20代(台でも可)の頃、夜明けの水鳥の歌声に連れ去られ、一度異界に閉じ込められたことがある。
 
日常と非日常の境目を穿ち漏れ出てくるツオネラの白鳥の歌。
 
おまけにここの野鳥共は密かに連携し、なにやら異世界の未知のポリフォニー規則をベースに全体で何やら会話しているようなのだ。
 
オリビエ・メシアンは日本に旅行したとき、軽井沢で野鳥の鳴き声を採譜した。

Catalogue d'oiseaux(鳥類図譜)では異界の音響とリズムを人が聞きえる形にしてピアノに写し取っている。
この人の生涯最後の大作はオペラで、アッシジのフランチェスコが題材だった。
聖フランチェスコも鳥と話ができた人だ。
 
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朝メシ食って、コーヒー飲みながら本日の行程を協議する。
それにしてもキャンプ中だというのに野菜サラダの豊富なこと。
スーパーで買い過ぎてません?
 
我々のすぐ上のサイトはソロツーリングの方で、淡いグリーンのテントひとつがポツンと設営されてるだけだった。
朝、バイクの荷台にテント・寝袋・銀マットだけ積んで身軽にサッと出て行った。
食事はすべて外食、テントではライダー服だけ脱いで眠るだけ、というスタイルの身軽なツーリングをされているようだ。
大阪下町長屋の路地風に荷物が溢れてしまい、常に荷造りに手間取る我々のスタイルを少し反省。
 
昨夜、「ひらゆの森」で乗鞍ロープウェーのポスターを見た。
上高地シャトルバスの案内も。
 
「上高地、ここから30分だって?どうする?」
実はな〜んにも知らず、その予定でもなかったのに平湯に来てしまっているのだ。
下呂の南方から長野県に越え、諏訪湖あたりからビーナスラインを北上するような算段だったハズだったのだが?
まあ、いいや。 テント泊の、このいいかげんな気楽さよ。
 
上高地に行くより、ビーナスラインを目指すのが先決だな。
天候も悪化してるし。
上高地の方角をちらりとながめ、平湯から安房峠を抜け松本に急ぐことにする。
 
安房峠トンネル有料道路のゲートに行くと、「ETCは自動ではないが使用できます」というようなことをメガフォンで叫んでいる。
「バイクなら一旦中に入ってから、道端で停めてカードを持ってきてくれればETC料金で通行できますよ」と料金所のオジさん。
 
荷物も積んでるし、バイクの座席の下からETCカードを出すのは面倒だ。
「ETC割引で幾らになるんですか?」
「300円。半額です。」
「カード持ってきます!」
↑有料ゲート内の路肩でバイクの座席を外し、ETCカードを取り出すの図。
 
安房トンネルを抜けると、下り坂途中で信号があり三叉路になっている。
左、上高地、右、松本。
赤で停車中に左上高地への道を観察すると、ゲートがあり、制服係り員が2名侵入車をチェックしている風である。
そこから先は一般車両は通行禁止。
 
松本方向に右折。
薄暗くガタガタのトンネル続きで、急に山壁が崩落し道路にパイトンが並んでいる部分も現れる。
USJのジュラシックパークライド・アドベンチャーを思い出させる。
通過すると暗がりから急に恐竜が吼えかかってくるヤツ。
 
やっとジュラシックライドを抜け、最初のドライブインで休憩。
このドライブイン沢渡(さわんど)で、サンプル品のマツタケ茶を大量にヨメがくすねている横で上高地関係のパンフレットを熟読。
上高地へはバスかタクシーのみが通行でき、一般車は平湯か沢渡の駐車場に置いてシャトルバスで行くのである。
見れば、ドライブイン沢渡の向い側が松本市営第4駐車場。
ここからもシャトルバスが出ている。
平湯では上高地には行かないと決めたのだが、ここが最後の決断場所のようだ。
ドライブインの女性従業員に「あなたなら今日の天気で上高地に行きますか?」と訊ねる。
親切な人で奥からいろいろ地図、資料の類を持ってきて相談に乗ってくれる。
 
シャトルバスで上高地往復2000円
駐車料金はどこの駐車場でも一律バイク200円
シャトルバスの運転間隔は10分から15分毎。
 
「どうする?」とヨメと再協議。
私もヨメも上高地は初めてなのだ。
「次回、天気のいい日に来ると思う?」
「もう来ることないだろな・・」
「上高地、行こう!」
                   (上高地銀座かっぱ通り)
 
沢渡市営駐車場ではバイクは停められないので、ドライブインのオネエさんに教えてもらって、少し上の民営の茶嵐(ちゃあらし)駐車場に行く。
 
呼びこみのオニイさんが「バイク300円」という。
「この地区では200円均一と書いてありますよ!」と公式パンフレットを見せる。
季節アルバイトらしいオニイさんは上司と相談に行き、やってきた上司が200円で合意。
ナメてはいかんぜ。ちゃんと事前調査済みだよ。
 
ヨメはバイクの荷物を解き、ハイキング用靴に履き替え、トイレでズボンも取替える。
 
茶嵐停留所に行こうとすると、駐車場出口で客待ちをしていたタクシーのオジさんに「相乗りどうですか?」と声をかけられる。
4人相乗りで4000円、一人料金にするとシャトルバス往復の片道分と同額である。
バス待ち時間の必要なし。
即決し、相客を待っていたカップルとタクシーに乗り込む。
かくしてタクシーで上高地に乗りつけることになったのである。
 
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   ↑ タクシーの窓から絵葉書で見たような大正池に映る穂高連峰を通過。
  
穂高連峰には奥穂高、前穂高、西穂高はあるのだが本家穂高はないようだ。
連休でどこかに遊びに行っているのかも。
 
途中、タクシーのオジさんから上高地の要所要所のガイドも受け、シャトルバスより選択としては良かったようだ。
 
「ジュラシックライド道路は現在も崩落多発で修復中箇所あり。
大正の焼岳の噴火で梓川がせき止められ池になった。だから大正池という。
赤屋根の帝国ホテル。一年前から予約で満員。一泊5万からン十万。
もし雨なら上高地からは何も見えない。」云々。
「じゃぁ、本日は曇りなので我々は大変な幸運に恵まれたというワケですね!」とか相手する。
上高地バスセンターウラのベンチで先ず腹ごしらえ。
売店で買った弁当と持参のレタスときゅうり(!)
 
ドレッシング代わりに、なぜか持っている粉末マッタケ茶。
 
    河童橋にて↑

「河童橋できゅうりだね!」とギャラリーの声あり。
 
タクシーのオジさんの言を入れ、明神橋まで右岸、左岸を回ってくることにする。
右岸では観光散策客よりもリュックを担いだ登山客の方が多かった。
下山途上の今にも倒れそうにヨタって歩いている人もいる。
 
右岸をしばらく行くとキャンプ場があり、少数ながらテントも見える。
登山のベースキャンプ用だが、このような環境でテント生活するという着想には吸引力がある。
野鳥の声を聞きながら目覚め、観光客の居なくなった静かな夕方に山を見ながら瞑想するのだ。
 
「昼間何するん?」
「帝国ホテルのロビーに行って一日中新聞読むとか・・」
 
平湯野営場よりもっと面白そうだ。
一週間くらい上高地で暮らしてもいいかも。

とは、思うのだが、ここまでテントその他を担いで来なけりゃならないのではね。
梓川の川原で↑
歩いて少し汗ばんだので上着を取ると、適当に着てきた古いカッターシャツの赤色が案外景観に合っている。
私の現役時代にはジャケットの下は、カタギでも皆こんなカラーシャツにネクタイで通勤していたものだ。
それが現在ではいつの間にか葬儀場直行可能黒スーツ白カッターのモノクロユニフォームが普通通常圧倒的ドミナントマジョリティ。
ちょいと恐ろしい気もするのだが、どちらかというと私の青年時代の日本経済の方が異常だったのだろうよ。
 
右岸は潅木のつづく鄙びた道筋で少々退屈する。
一昨年に歩いた栂池自然園の方が景観に変化があったなと思う。
 
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お互いにガン付てあっているサルとヨメ。
 
 
 
 
 
明神橋→
 
 
左岸は梓川が近く、変化があり専らこちらが観光客の散歩コースのようだ。
 
 
 
 
 
 
穂高と梓川が望めるスポットで、相互契約を交わし別グループにシャッターを押して貰う。
契約相手はスマートフォンを触ったこともない老齢カップルだった。
人生の選択をここで誤ってしまった(^^;
上の冠雪部が入ってない(--):
 
まあいいや。
上高地に来るという予定じゃなかったんだし。
 
実は、ちょいと時間をずらし、また別の方にシャッターを押していただいた。
それが第一回冒頭のタイトル写真。
 
明神橋まで一周2時間強。なんだか疲れてしまった。
一昨年に行った栂池自然園では他の散策者をごぼう抜きしたのだが、どうも上高地では若者に抜かれて行ってるような(^^;
 
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上高地バスターミナルでタクシーの相乗り相手を探すが、時間が遅いのか、タクシー乗り場に客はいない。
客待ちの運転手が「二人、3000円で行く」と提案してくる。
「いや、2000円でないと。」と主張。
帰りをシャトルバスにすると片道1200エンになり、そうすると最初からシャトルバスで往復した方が安くなる勘定だ。
私はそれでもいいと思うのだが、もちろんヨメは承知しない。
 
遂に「二人で2000円でも行く」という老運転手が現れ、ここでもヨメが人生に勝ったのである。
 
茶嵐駐車場に戻り、着替えてR158を松本に向けて下る。
本日は松本泊まり。この時間では他に選択肢はない。
まあ、中都市なのでホテルはそこそこあるだろう。
 
R158の景色はまあまあ良かったのだが、夕方のラッシュ時のような車列が連なりツーリングの自由さはない。
 
松本市街に入り、適当なショッピングセンター前の駐車区画にバイクを置き、地図確認や情報収拾。
結局、松本のスーパーホテルをスマートフォンで調べ、電話すると「二人分7600円でお部屋ご用意できます」というので決定。
場所は宿泊案内所と間違えて入った地元のオジさんに聞いて解っている。
松本駅のあるブロックだ。
 
昨年高山のスーパーホテルに投宿して部屋の規格その他は承知している。
清潔で一晩眠るだけなら充分な設備に「健康朝食」付き。
ただし、松本駅前スーパーホテルには天然温泉はなく、契約駐車場料金1000円別枠で徴収された。
 
二日キャンプ生活後のホテル投宿である。
テント設置も不要、寝袋マットの用意も不要、ユニットバスに入って眠ればいいだけ。やはり楽チンである。
 
バイクを駐車場に入れて外食に出る。
駅前のロフトの入っているショッピングモール(アリオ松本)で先ず荷造り用ゴムロープを調達に行く。
 
ところがこの手の結束用品はスーパーにもロフトにもなく、売り場のおニイさんが調べてくれたところ、やはり5階の100円ショップで、との由。
ゴムロープ大小3本購入。
ついでに同じフロアのレストランで何トカ定食X2とビール。
 
ホテルに帰って、ロビーの、ロビーと言うほどの格調でもないが、とにかくロビーのパソコンで明日の情報収集。
 
いよいよ明日はビーナスライン踏破ということで、就寝。


origin: [GW信州野営ツーリング(2台 6泊7日)の3] 2012/5/10(木) 午前 1:02
平湯 蓼科