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 富士・オルゴールの森 [山梨]


'15 3月12日(木)
3月12(木)
朝、起き抜けに温泉。

その前に、このホテルの最上階の展望台に集合し、記念撮影を行う。

ハハオヤには急な階段を自力で昇っていただくしかない。
既に朝日の時間は過ぎてしまったが屋根裏展望台正面に富士。
本日はイヤというほど富士の写真を掲載するが、これが第一発目。
富士はすっきりと自立し、人にその威容を見せつける。
思わず「霊峰富士」というような月並みな形容を思い出してしまう。
そびえる富士の畏怖・・・と言いたいところだが。

やはり畏怖というのは人跡未踏の地からみるヒマラヤの高峰の為の形容だろう。
富士は月並み風に優しい姿をしていて、気さくに門戸を公開しているのだ。
このような人口密集地を従えても尚、秀麗な姿をタダで見せてくれている優しさ。
ヒマラヤ敗退後に知る、富士の無限の優しさ、か。
反対側には河口湖。

本日は対岸にある「オルゴールの森」(なにそれ?)に行く予定。
対岸からは湖ごしに富士が見えるはずだ。
本日も晴天らしいよ。

なかなかのんびりできるホテルだね。



朝食の光景。
よく解らん顔だが(^^; 品数だけはやたらと多いホテルの定番朝食である。
朝はあまり食欲がないので、ノリ・シオジャケ・味噌汁・ご飯の民宿風朝食がいいのだが。

しかし、「ご飯はお替りできますよ」の声に「わぁい!」と即反応してしまい、「アンタ幾つやねん!」と自分で突っ込むしかない私は一体何やねん。

ホテルをチエックアウトすると、この辺りのホテルの約束事で駅まで送迎してくれるマイクロバスが待っている。
取りあえず駅ではなく、湖を周回するバスに乗ろうと河口湖大橋のたもとのハーブ館前まで送ってもらうと、「オルゴール」ならこのまま行きましょうか?とのことで対岸まで行ってくれた。
このホテルはマル評価でいいだろう。

さて、博物館「オルゴールの森」。

富士を望む庭園に疑似西欧18世紀風建物群を配置した博物館風遊園地らしい。
どこかで見かけたような光景で、上手くまとめてあるがアルプスでなくて富士が覗いているのがヘンで面白い。
天気がいいのでなかなか気持ちがいい空間になっている。

博物館としては西欧の各種オルゴールや自動演奏楽器(ロールピアノ、手回しオルガン、ダンスオルガン等)の展示と演奏イベントを行っている。
ダンスオルガンというのは引き出しがたくさんあって中に衣類をしまっておけるようなオルガンではなく、20世紀初頭の合衆国のダンスホールで設備されていた自動演奏オルガンらしい。

音楽に合わせて人形も動く大がかりなもので、20世紀初頭の合衆国の景気やバカバカしくも壮大な大衆的娯楽への素朴な夢が感じられる。
エレクトロニクス以前のメカニズムで電気がエネルギー源だが、空気圧ですべてが制御されている。つまりは古典的なふいご式の教会オルガンの流れの末裔であるわけだ。

オルゴールというのも自動演奏装置なわけだが、この博物館は自動装置という近代が夢見た技術とマニエリスムの沸騰する熱気もかすかに漂っていたりする。

このお兄さんが19世紀風の見世物小屋の呼び込み口調でいろいろ紹介してくれた。
後で詳しく話を聞くとその辺りの事情に詳しく、かなりなオタク風な印象。
バイオリンの自動演奏装置なるものがあり、周回する環状の弓、一弦だけを担当するフレット管理(全部でDAE3絃のみ使用)、絃を引っ張ることで付加するヴィブラート等のメカニズムを情熱的に語ってくれた。
「コンピュータ時代の我々には絶対に発想できないメカニズムである」と解説する本人自身がチューニングもやっているという才人である。
記億装置としてのロールペーパーが初期コンピューターの鑽孔テープに繋がり、この自動装置自体が実は多機能コンピュータと繋がっていく道はほの見えている。

すべてがエレクトロニクスに置き換わった時点である種の生々しい情熱が経ち切れたような。
いや、初期のコンピュータ時代の鑽孔紙の穴を読める私としては、コンピュータのスクリプト言語プログラミングに19世紀マニエリスム風の熱気を未だに感じたりはしているのだが。

まあ、あんなそんなで比較的狭い敷地なのに午前中いっぱい過ごせましたよ。

ここでお昼にするという予定だったが、朝ホテル定食のおかげでそんなに空腹感はない。
それより、ヨメがホテルの手前三軒目のレストランが評判との情報を得ていて、そちらに行こうか?とか。
相変わらずお姫サマをやっているハハオヤ。
実はヨメがすべてをやらせていて、本人よりもやらせている方が喜んでいるのだが、まあいやあ、老人福祉なんてものの実体もそんなもんだろう。

何でもいい、ハハオヤもこの辺りまでは元気で満足気だったのだが。


馬車ではなく、車を自分で押して強風下の河口湖大橋を渡るハハオヤ。

オルゴールの森を出て、湖を周回するレトロバスに乗ろうとしたところ満員でとても老人+押し車をぶち込む余地がない。

じゃあ、天気もいいし橋の上からの富士もいいとかいうし、歩いて戻ろうか?ということになった。

ま、確かに河口湖大橋上も絶景富士ではあるが、湖と人物と富士は同じ画面には入りませんなぁ。

それより橋上の風はことさらきつい。
往きはマイクロバスで10分程度の道が、一時間強の寒中行軍になってしまった。
それにハハオヤには猛スピードで車が往来する道路を渡ってモデルが務まるような俊敏さもない。

ようやく橋を降り切り、ハーブ館のバス停に着くが、目当てのレストランに行く西湖方向のバスは極端に少ない。

どうするか思案していると、いい加減歩きつかれたハハオヤが「どこ行くんや?まだ歩くんかぁ?」と引率者の苦労もなにも、屈託なくなじりにかかる。
「知りませんよ!どこに行けばいいのか今考えてる最中です!」
=(あんたは気楽でいいよ、何も考えずついて行けばいいんだから)
と、つい当方もちらりと切れかかったりする。
ヨメも屈託なく、ハーブ館横のカステラ屋のサンプルをつまみに行き、私だけが苦慮の決断。

本日の宿はハーブ館からたった一ブロックのところだった。
途中に揚げたて天ぷら屋もあるようだし。

とにかく宿まで歩きます!
食べるのはそれから。
ところが天ぷら屋はお昼時のみ営業とかで閉まっていて、ホテル近辺にも食べ物屋はない。

宿泊費は昨日の宿より張り込んだはずなのだが、あまりロケーションがよくないホテルだった。
 
大池ホテルの部屋に案内され、あまりの間口の狭さに悪い予感がし、「富士山側眺望」の窓を見ると殺風景な駐車場の上の富士になんと目盛りが。
なるほど雪は五合目下までとか一目で分かるようになっているんですねぇ。ふむ・・・。

案内してもらったおジョーちゃんに尋ねてもこの界隈にはカラオケ喫茶が一軒だけ、ロクな店はないようだ。
なんだか不発・失敗ですかねぇ、この宿は。
とにかくハハオヤを部屋に残し、町に出てファミレス・コンビニの類を探し、オニギリ・サンドウィッチの類を買って帰る。

あまり大したロケーション、施設風格でもないのだが、和服を着たいかにも「女将」風がうようよいたり、エレベータに少しでも近づこうものならサッとブレザー制服風が近寄りボタンを押し、扉が閉まるまで見送ってくれる。
別にそんなのしていただいてもねえ。煩わしいだけで。
押し車でのたのたしているハハオヤに、開けてもらったエレベータの中から「おカアさん、ダッシュ!」とわざと叫び、直立して待っている制服へ多少のアテつけはしておいた。

「ここはお風呂の評判で選んだので」とヨメが弁解するその風呂だが。
本館5階の展望風呂はありきたりの施設で、どうしてだか人で一杯。入る気にはなれず。
長々と一階のロビーを縦断してたどりつく売り物の別館露天風呂は、一見趣向に富む風に見えるのだが、週末日帰り温泉評論家の私の目からするとごく普通クラスの設備である。
趣向をこらしても、塀の向こうは生活道路。
車の走行音丸聞こえで昼間はリラックスどころじゃない。

夜は狭い方の露天が男湯になり、展望大浴場の喧騒に嫌気がさして露天に降りていくと、狭い方というのが幸いして誰も入ろうと思わないのか無人だった。
やはり露天風呂には一人でゆっくり浸かっていたい。やっとその愉悦が少々。

散々貶したが、夕食メニューはさすがに昨日のホテルよりはランクが上のようだった。
寄せ鍋と陶板焼きで何とか豚の食べ比べとか、確かにうまい。
思い返せば昨日のホテルの鍋・焼き物は燃料が少々貧弱であまり熱くならなかったのだった。

例のごとくかしこまる制服のおニイさんにかしずかれ、地下大食堂に案内されると、テーブルに花盛りが置いてあり、ハハオヤ宛ての誕生日メッセージが。
思わず「Happy birthday ♪」と正調で歌いだしてしまい、ソレと気が付いた場内から拍手が沸き起こる。
「ありがとうございます。87歳です。いや私が、やないんで・・」と代表して返礼挨拶申し上げる。

テーブルにいつの間にかご主人・女将が祝いにやってくる。
両者とも20台の若者(テーブルの紹介プリントによる)で、バトンタッチされたホテル経営を懸命に成功させようとしているとかの様相。
どことなくアンバランスなホテルのような印象だが、まあいろいろ試行錯誤中なんでしょう。

ま、そんなところで対ハハオヤ企画として言えば思いもかけぬ、願ってもないようなイベントになり、このホテルでの先ほどの酷評を幾分埋め合わせた形。          

(朝日富士と月@ホテル大池展望テラス)

origin: [しかたなし富士紀行(2) ] 2015/03/18(水)02:10
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