富士・オルゴールの森 本栖湖・朝霧高原

 富士・西湖・風穴 [山梨]


'15 3月13日(金)
3月13(金)

起き抜けに風呂に入り、
朝日富士を拝観し、
旅館朝食をいただく。
火にかかっているのは山梨名物ほうとう鍋。
私にはどうしても「きしめん」としか思えないのだが・・

はい、あんたが主役。


さて、本日の予定だが。
宿舎の予約はしていない。
天候次第では本日帰阪してもいいのだが、もう少しもちそうだし、このまま帰るのもちょいと芸がない。
昨夜にひきつづき朝食後もロビーでいろいろ検索する。
週末前日ということで事前に候補に挙げていた宿は殆ど満室のようだ。

往路の富士急バス路線で見えた国民宿舎風施設「富士緑の休暇村」にtel。
本日空室あり。素泊まりなら5千円台。そちらでいいかと算段。
ヨメに言わせれば、昨夜すでに常に空室のありそうなソチラ泊を内定していて、「そう言った!」と言うのだが、私は覚えていない。
国内旅行企画担当はヨメなのだが、習慣的に交通費・ホテルの支払い等の現地主計担当者は私で、現地でのホテル予約手配の担当はどうもあいまいだ。

「緑の休暇村」に予約はせず、本日はなりゆき次第とする。
チェックアウト後、近くの河口湖周遊レトロバスの停留所に行くが、方向違いの停留所でまってしまって、向かい側のバス停から出ていく周回バスを見送るハメになる。
20分の時間待ち。

「また歩くんかぁ」とぼやくハハオヤ。
この人はじっと待つということができないで、勝手に動き出してしまう。
湖で遊ぶカモを見ながらでも時間は潰せるというものだが、どういうわけかこのお方はまったく遠景には興味を示さない。
もしかしたらよく見えていないのかもしれない。
尋ねれば「見えてる」とは答えるのだが。
ヨメがホテルに走って帰り、送迎バスでの別停留所送りを交渉に行くが不首尾だったらしい。

そうこうしていう内に次のバスがやってくる。
かなり満員。中国やタイの旅行者が大きなスーツケースごと乗り込んでいる。
かろうじてハハオヤを押し込み、運転手と料金の交渉。

パンフレットや旅館のカウンターで河口湖周回バスの料金を問い合わせると¥1000一律のクーポンだけという情報だけだったが、実際は単品区間料金もある。

「とりあえず河口湖の対岸の終点まで行って・・」「自然生活館?」「ええ。それから西湖方向に
いくつもりなんですが・・」

料金後払いでとにかく乗り込み、走り出してしばらくすると横の私に運転者のおジさんが計算完了とばかり声をかけてくる。
「西湖方向なら700円以上になるから、自然生活館からの往復だとクーポンの方が。」
「しかし単一料金だと障害者割引が効くでしょう?」
「うーん、まあどちらでも似たような・・」「はい、ではクーポンにします。」

「オルゴールの森」を過ぎると突然車内にオルゴールのメロディが流れてくる。
思わず一緒に歌いだしてしまう ←そういう性格らしい(^^;

「カミナリサマをシタにきき、富士は日本一の山♪」
私の前に立っていたタイ系カップルの一人が振り向き「ウマイネェ」という。
「Mt.FUJI song」と注釈する。
後は英語で終点の「自然生活館で降りるのだが、そこがFUJIを見るbest placeか?」と聞かれる。「もちろん。そう思う。」とか自信たっぷり答える。何も知らないんだけど。

実際は、まぁこんな感じ。
ホテル街からだと必ず見えてしまう建造物は視覚に特には入ってこない。
今は特に何もないが、朝日や夕焼け、水面に映る富士影とかを足しこめばそれなりの図にはなるだろう。

こうか?→
月並だね。

こうか? ↓



まあ、なんでもいいが(^^;

生活館奥室内外の休憩所で本日午後の日程を検討。
ちなみにここではWIFIが効く。
入館は無料ですぞ。

次のバスでハーブ館に戻り、西湖方向のバスにのり、西湖民宿前とか適当に降りれば昼食場所くらいはあるだろう。
とか算段。

まだ天候は上々。



帰りのバスでは着席できたのだが、西湖行きのバスではまた満席状態。
ハハオヤとヨメは座席確保。

私にもどなたかが二人掛けの一方を空けてくれたのだが、ハハオヤの押しくるまが通路一杯ふさいでしまって入り口より奥には進めず、最前列で立っていることにした。
そのうちどなたかがが下車するだろう、と思っていたのだが、この路線では全員が終点付近まで行くようで誰も降りる気配がない。

やがて河口湖周辺の家並みは消え、山道になり西湖周回道路になる。

「こうもり穴」のアナウンスで最前列に陣取っていたおバさんグループ三人が降車ボタンを押す。
が、「こうもり穴」は三月末まで閉鎖」とかいう運転手のアナウンスで「え?ならキャンセルします」とか言う。
運転席のすぐ後ろに、つまり女性達の目の前に「こうもり穴」のポスターがあり、「closed!」の紙片が張り込んであったのだが。
横で立っている私がそのポスターを指さす。
「あはは、目の前に書いてあったのに。」とか笑っている。

少しきっかけが出来たので「じゃぁ、どこに行くんですか?」と尋ねる。
「いやしの里根場(ねば)」とのこと。
推薦してくれるのでこちらも便乗することにする。
「西湖民宿前」等を観察していたのだが、昼食できるような施設もないような感じで降車しなかったのだ。
「西湖いやしの里根場」下車。
広い駐車場があり観光バスも駐車している。
昼食施設くらいありそうだ。

ざっとみたところ、茅葺古民家を移築した山里観光村風テーマパークか。
駐車場脇には土産物屋兼簡易食堂もある。
降車組の流れに沿って歩いていくと観光村本体の入り口「入村料350円」と客引きのおニイさん。
どこかで昼食したいだけなんだがなぁ。

でも、比較的親切そうなおニイさんで、身体障碍者手帳を見せると「もちろん2人割引になります」とかで結局見学観光することにする。

私が村内のInfomationで「緑の休暇村」に行く富士急バスとの接続等を教示してもらっている間、ハハオヤはとある移築民家に上がり込み、お茶と漬物を振舞われていた様子。
住民とも職員ともつかぬ老婆が相手してくれていた。

この方は全く村の古老をそのまま演じてくれていたが、別の観光民家ではきびしい商売気しか見せない地元おバさん風もいて、職員従業員の出自、地位、業務意識はまったく多様(^^;

村内は一定の村落の時代設定で統一されていて、古い民具や縁側のたたずまいは日本人の原風景的に懐かしくもある。

私は大阪下町の生まれ育ちで、山村の光景の記憶があるハズもないのだが、いつの間にか文化的に日本の原風景を刷り込まれてしまっているようだ。
このハハオヤこそが、そのような日本の農村の出で、今でも尚日本農村の価値観と家・共同体・世間意識の中で生きているハズである。

しかし、例によってこのように「これでもか!」式にそれらしく設定された農村の光景にも別段この人の特別な興味を惹いている様子はない。
淡々と娘に指示された通りついて歩くだけの無感動な、それでも家で居るよりは面白い程度のお仕着せ旅行。いちいち感動してちゃ、このトシまで来れんがな。
尚、日本農村的価値意識についてのくわしい考察は私の論文「一所懸命の日本」を参照されたい。

まあ、いずれにせよこのようなテーマパークの作られた光景からは商業主義的な作為が見えるだけで、当然ならが日本文化がどうたらとかはまったく別のハナシである。

それはそうと、みたらし団子ひと串だけで昼食を済まそうというワケじゃないだろね>ヨメ。

本日も昼食はいつの間にかうやむやになりそうな気配もあったが、結局駐車場横の簡易食堂で定食モノ1.5人前を注文し3人でシェア。

ところが、ハハオヤはこれまでの旅館・ホテルでの豪華絢爛風夕朝食には無感心だったが、この定食は「おいしい」とか言う始末。

はっきり言わしていただくが、この人は自分が作り上げた狭い範疇の中での味以外は全く受け付けようとはしない。大抵は甘い(甘すぎる)か辛い(辛すぎる)かである。
決して甘さ・辛さに対しての許容範囲が狭いということではなく、甘い物や塩辛いものは「カラダにワルイ」と信じ、それ以外の価値判断を一切封じて勝ちえた87歳なのである。

クラシック音楽だけではなく、味でも大のB級グルマンである私は大阪のアジトで常に鍋にある何の味気もない得体のしれない煮物だけを食して長生きするよりは、変わりかつ丼500円を飽食して即死にたい。

できればヒマラヤの麓で死にたかったのだがね。
=>「カトマンズで死ぬということ」参照。

天候も多少下り坂。
本日の予定はこの辺りで「緑の休暇村」に向かうことでよろしかろう。
「いやしの里根場」の案内所で教えてもらった富士急バスとの連絡停留所「風穴」で河口湖周回レトロバスを降りる。

バス停のレトロバス乗車待ちの列から「イェーイ!」との掛け声をかけられる。
往路のバス同行妙齢女子会3人組だった。早くも「根場」と「風穴」を観光し終えたと見た。

当方もハハオヤを売店の食堂に残し、ブタマン一個をあてがい、見守り携帯を確認し、富士風穴観光に出発。

いきなりの地下への60段の凍結階段ではハハオヤの押し車ではどうしょうもない。

入り口の料金所では「風穴」「氷結」双方のコンビ入場券も販売していて、次のバス連絡までに両方回れるのかと多少躊躇。

この料金所のおジさんの要領は素晴らしく、「レトロバス?」
「いや、緑の休暇村行きの・・」と応える尻から後ろの時刻表をチラリと検索、「後、50分。氷穴は無理だね。風穴の方が内部の高さがあって絶対いいよ。」とかで即決させてしまう。

しかし、富士風穴そのものは昔の食料・養蚕卵の保管所があったというだけの天然地下洞窟で期待したほどの地の底地獄的得体のしれない奥行きはなく、5分も歩けばすぐに行き止まり、Uターンで地上帰還。

せめて青木ヶ原樹海を彷徨いカトマンズ・ヒマラヤ死の誘惑の疑似体験をしようと試みたのだが、道が凍っていてコケそうなので、ここでもやむなく引き返す。

いつ死んでもいいのだが、痛いのは絶対に嫌じゃ。

売店で待つハハオヤと合流。
本日の最終目的地「緑の休暇村」に向かう。

ちなみに、ハハオヤはこの売店で手袋、朝のホテルで杖を忘れてきている。
尚「ブタマン、おいしかった。」そう。

富士急バスで「緑の休暇村」。
降りると即、まだバスが動いてもいないのにハハオヤが「どっち行くんや?」と聞く。
引率者も初めての場所であるということをこの人はなぜ思わないんだろうか?
「さあ?」と答えるのが、バスが行ってしまうと宿泊施設はすぐ目の前に見えているのだ。

正面に「本日空室あります」との電飾看板が出ている。
「空室」は固定表示で、他の標示に変わる恐れはない。
絶対に満室にならない前提で、永久設置してある自信満々の案内板と見た。

受け付けで一泊朝食付きを申し込む。
ヨメは素泊まり料金でも朝食が付いていると思っていたようだがそれは違う。
ただし、併設の日帰り温泉施設「ゆらり」の自由入浴クーポン込の値段設定。
クーポンなしなら入浴割引券をくれるが、これは一回限り有効。
「ゆらり」に行かなくとも館内に内湯施設はあるし、「ゆらり」は翌朝の時間は開いていないので割引券でもいいか、とか考える。
あるいはハハオヤだけクーポンなしとか? しかし三人同じ宿泊プランでないと受け付けられない云々。面倒くさいので朝食+ゆらりクーポンにする。

夕食は「ゆらり」施設内の食堂で、と予定する。
夕食バイキング付きプランにするとハハオヤ分が量的に損になる。

ハハオヤの都合で一階の部屋を探してもらったが、2階しか空いていないとか。
まったくエレベータのない施設である。
しかたがない、ハハオヤをロビーに待たせておいて我々だけで部屋に荷物を置きに行く。
部屋自体は5・6人部屋くらいで十分広く、あっけらかんと清潔だった。

先ずは日帰り温泉へ。
ところがホテルから温泉への通路がやたらと長く、途中で段差もある。
ハハオヤは何とかクリアしたのだが、最後に温泉施設にたどりついたところで温泉受付入り口が2階にあると判明。
昨年リニューアルしたとあるが、バリアフリー化への配慮は一切ない施設である。

しかも、二階で入場し更衣するが、浴場施設が1・2階に分かれていて半露天式の階段で降りていく一階の方がメイン浴場。
どう転んでもハハオヤには無理な風呂で、館内内湯にしとけばよかったと後で思うのだったが。

逆に言えば、浴場が複数階に散在するかなり面白い日帰り温泉で、露天がメインの殆どの浴場から富士が見える。
もう富士は殆ど雲に紛れてはっきりしていなかったが、富士が正面に見える露天風呂なら確かに¥1300でも集客できるだろう。

私はのぼせるのでサウナはニガテで、水風呂もニガテ。
露天風呂が好みだが、長湯するのはニガテ。
ここに「香りの風呂」というのがあり、半野外式で温度が丁度体温と同じくらい。
いわゆるぬるま湯である。
これが実に心地いい。
これは日帰り温泉評論家の私でも、初めて遭遇した風呂だった。
いくらでも長湯ができる、 まるでぬるま湯に浸かっているような心地よさ(^^;
ただし、身体は温まらないので風がきつい外(野外)にでると鬼のように寒い。
即、足元の露天風呂に飛び込むしかない。

夕食後もハハオヤを部屋に置いて、我々はもう一度入浴に行くのだが、ヨメはこの「香りの風呂」入浴は未遂、しかし私はヨメが気にいった「炭酸温泉」未遂であったらしい。
奥まっていて気が付かなかったのだ。
入浴後、館内の食堂も見学、前の道路沿いにある道の駅「なるさわ」にも見学にいく。
私は夕食用の軽食堂を偵察に行ったつもりだが、ヨメは売店の閉店間際半額モノに集中。
悩みぬいてレジまで行くが、サイフを持ってきていないのに気が付く。
「お金持たずに?信じられない!」とか言うが、部屋を出るときにサイフは貴重品金庫に、と合意したじゃないか!
あわてて部屋まで走り、サイフを取に行く。
閉店の6時10分前。 この施設群の敷地の広大さはハンパじゃない。
私は途中でリタイヤ、ヨメだけが走り切り、見事6時に半額パン類をゲット。

我々が部屋まで戻ると丁度夕食バイキングの会場が見えたので、ついでに見学させてもらう。
バイキングなのにホテル仕様の個別燃料付きの鍋ものがあり、天ぷらを目の前で揚げているブースもある。
「食べたかったら、バイキングにしてもいいよ?」というヨメの誘惑に乗ってしまい、ホテルの受付で夕食付プランに即変更。

「ゆらり」からハハオヤを従業員作業用のリフトで降ろしていただき、ハハオヤをホテル2階まで上げ、いそいそと夕食場に急ぐ。

我々だけが最終入場組で、まだ食物仕入れ一巡しかしていないのに最早だれも残っていない(^^; 
2巡目で既に従業員が後かたずけを始める始末。

ぎりぎりで夕食バイキングを申し込んだので仕方がないが、デザートのロールケーキは既に無かった。

しかし、バイキング形式夕食としてはまずまずの満足できる内容。
鍋物肉類もちゃんとあり、刺身の小皿さえ取り放題。

ハハオヤには全く合っていないのだが、私にはぴったり・分相応なクラスの宿泊施設だったといっていい。

origin: [しかたなし富士紀行(3)] 2015/3/20(金)8:32
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