![]() |
![]() |
ぺティナイフとザーネ ..![]() |
[日本語・外国語] |
「オートバイ」 この奇妙な造語 |
2012/10/12(金) 午後 2:31 |
「セル」式というバカげた省略用法にひっかかって「この卑屈な精神」とまで憤りはしたのだが、もちろん私はガチガチの言葉狩り中世的唯名論者ではない。
外国語(特にその校正)に関わる商売が永かっただけに、そのあたりに食いつく性癖があり、適当にハナシのタネにして楽しんでいる部分がある。いや、ソッチの方が多いのかも(^^;
セルフ→「セル」のケチくさい省略法にしても、現在そのように思い込んで使用されている方には別に何も含むところございません。ただ、一度そのコトバの語源的成立過程という知識を得てしまえば、二度と自分では使用できないという余計な言語倫理的潔癖性(あるいは幼児性)があり、自分で自分の首を絞めることさえしてしまう。
日本語として広く使用されていれば、とりもなおさずそれは日本語なので、語源的潔癖性を持ち出してはハナシが違ってくる場合がある。
しかし、こと差別用語に関してはコトバ自体が不快に思う方もあるので、厳密に考える必要はあるのだが。
まあひとこといっておくと、差別用語だといってカリカリする方とはあまり付き合わないにしくは無い。
---
「デジタル」という標記・発音には違和感があるのだが、私だけ日本語の文脈で「ディジタル」と言ってもまったく無意味で、返ってイヤミなヤツと受け取られる可能性だってある。
しかし、ハードディスクをハードデスクという人はいない。机は固いモンやしね。
どっちでもいいのだが、ただ私の違和感は奇妙に残ったまま、完全排出には至らない。
---
罪はないのだが、違和感最大で心的大爆笑をしてしまった省略用語がある。
ハハオヤとヨメの会話:
「それステンやから、はよ火から降ろさな」「ステンやからねぇ」
うむ、どうも「ステン」とは「ステンレス・スチール製の鍋」(stainless steel pan)の略らしいのである。
この省略形の見事さにはあきれてしまい、笑ってしまう他はない。
この母娘には全く語源的知識、基礎英語力はなく、それが幸いしてこのような効率的なコミュニケーションが成立している。
stain サビ、汚れ、しみ、着色 発音的には「ステイン」
less 〜しない、無い 「レス」
steel 鋼 発音的標記では 「スティール」
「ステンレスの鍋」という日本語なら私にも許容範囲である。
stained glass こいつを何故か「ステンドグラス」と発音する言語体系の国での話である。
しかし、これ全体を「ステン」と称する、という発想はとてもワタクシがごときの及ぶ頭脳のひらめきではない。
私には「それサビやから、はよ火から降ろさな」というコトバの意味が先ず見えてしまい、没コミュニケーションとなる。このLessがなければコトバの意味をなさないのだ。
「ケアレスミス」なんてよくいうが、このレスを省略して「ちょっとケアしました。すんません。」なんていうと、知っててやったんじゃないか!と悪意をかんぐりたくなるのだ。
ま、しゃーない。
実を言うと、私にもその場では「ステン」の意味が全て解ってしまったのだから。
---
だから、「オートバイ」も平気で使ってました。これからも使ってしまうでしょう。
これはレッキとした日本語でヘンに語源的に詮索するともうワケわからんことになる。
困るのが「自動二輪車」という日本語がカタログ的、形式的な用語で「自動車」ほどの一般性を持たないことだ。
もっとも「自動車」が一般的といっても、「クルマ」にはかなわんが。
そういうところは欧米でも同様。
Autocar だのMotercar だのとは言わず Car。
日本語で「バイク」と言うと、人によってかなり意味する内容(ソシュール言うところのsynifie)が違うだろう。
ウチの近所では「50ccスクータ」
一般的には「自動二輪車」
阪大サイクリング部等なら「自転車」
BIKE(バイク)はBicycle(バイサイクル)の略語で「二輪車」がもとの意味。Bi(2)Cycle(輪)
英語では「自転車」の意と中学校で習う。
だから「バイク」が自転車のことであると思うのが一番正統的な解釈になる。
しかし、どうも自転車一般をバイクと言う人は小数派のようだ。
マウンテンバイクというのはある。
で、バイクが50ccスクーターを意味するような人でも、自転車をイメージする人でも「自動二輪車」という意味に限定させるときに「オートバイ」を使用するようだ。
オートバイク(AUTO BIKE) の略のはずだが AUTOBIKE という英語はない。
あるいは米語ではなく英語かも。
(米語では MOTER BICYCLE → MOTOCYCLE)
だから和製擬似英語でオートバイクを造り、さらに省略して「オートバイ」が完成したんだろう。
こういうときに「バイク」のクだけ省略するヤツの感覚が理解できない。
オートバイクと言ったときにはまだ意味があったのに、なんで「バイ」だけにしてしまうのか?
セルフ → セル
バイク → バイ
こういう省略は、ステンレス → ステン と同じ単なる無邪気な無知なのか、それとも若者的な仲間符丁・隠語・逆差別の幼形成熟的特徴なのか、それとも・・・
好意的に解釈すれば、セルフの「フ」もバイクの「ク」も、カタカナで母音込みで発音するより無いほうがより「英語的」に聞こえるのは確かだ。
じゃが、いい加減母音を発音しないカタカナにも慣れてくだされ。
テレビドラマの吹き替えで「いい加減にしてよ!スチーブゥたらぁ!」といってたのには違和感を満喫させてもらった。
どのみち発音できないのなら固有名詞も訳してはどうか?「太郎たらぁ!」とか。
「インターネット」では絶対通じない。「イナネ」と言いなさい。
まして関西風に「インター↑ネット」と途中「ネ」を上げてみたりとか。
「洗濯ネット」ならちゃんと言えるのに、インターネットをわざと「ネッと↑」としり上がりに言うとかもハナにつく。
いずれにせよ日本語を大切に使ってきた者の仕業ではないのは確かだろう。
まあ、昔暮らしてたフランスでも若者は「MOTO」だけで自動二輪車と通じさせてたモンなので、いずこも同じかも。
しかし、現在「オートバイ」というと50cc スクーターには使わないようだ。
しかも、オートバイはどうも古臭く、最近は全て一緒クタにしてバイクといっているようだ。
もうひとつ「単車」という言い方もあって。
ワケわからんし、もうワタしゃ知らん。
日本語の自由な流動性を否定はしないのだが、頼むからせめて語感のいいヤツを。
|
![]() |
![]() |
ぺティナイフとザーネ ..![]() |