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「〜になる」 の研究 ..![]() |
[日本語・外国語] |
ドゥ・ボン・クーフゥ |
2013/2/7(木) 午前 0:09 |
朝から真壁刀義がテレビに出ていたのでしばらく見ていたら、都内のケーキ屋の前で「堂凡空風」と言うではないか。何それ。
私は真壁刀義はきらいではないのだが、今はその話ではない。
堂凡空風って?
よくみるとケーキ屋さんの店名らしく「パティスリィ ドゥ・ボン・クーフゥ」と画面に出ている。
はて?フランス風の店らしいのでフランス語なんだろうが。
ドゥ・ボンは、まあわからんこともないが、クーフゥ とは何だろうか?
私はフランス語の専門家だが、このカナからは何も思いつかない。
何やら店名の意味を言ってるが、それだと「ド・ボン・ケール」とか「ド・ボン・クール」とか標記するだろう。
「クーフゥ」にあたるフランス語に心当たりはない。
真壁刀義がごときに完敗を期すのもシャクである。
ネットで検索してみた。
![]() え? やっぱり「ケール」じゃないか!
ごく一般的なフランス語の店名で、「良心屋」というような意味。庶民的で、あまり高級感はない。
なんでcoeur を 「クーフゥ」 とカナ書きしてるのか、意味わからん。
「ケール」とか「クール」とか書いてくれれば標準的にフランス語の原意は理解できるのに。
どういうワケで「クーフゥ」じゃい?
私の頭の中は出口のない金網デスマッチ風のバトルロイヤルになっていく。
もちろん、フランス語の発音をカナで標記するのは近似値でしかない。
だから、どのように書こうといいわけだ。
それでも日本語を標記するローマ字システムがあり、クーフゥ なら KUFU としかアルファベットを思い浮かべられないのだ。 フランス語標記だと coufou だろうな。
(ちなみにラテン語系のフランス語ではKのつづりを極端に使わない。
Kはゲルマン系諸語に特有のつづり。英語 Copy はゲルマン系のドイツ語では Kopie。
オランダ語はここ20年でゲルマン式からラテン式に変ってしまった。)
coeur この Oe はくっついていて一文字になるのだが、発音は 「エ」 と 「ウ」 の中間で私には「エ」に近く聞こえる。 しかし、初学者用の辞書では 「ウ」とカナをふってあることが多い。
だから前半は「クー」でいいのだが。
最後の 「r」 は当然ながら「ル」と書くべきじゃないか?
ここで、やっと相手の仕掛けるワザがチラリと見え始めた。
問題は日本人の大好物、アールの発音ですね!
もちろん、アールの音は「ル」ではない。
「ル」といってしまうと、余計な「ゥ」という母音が入ってしまう。
英語の「Apple」の発音は「アップ」と言って最後に発音しないで舌を上あごにつける。
発音しないのだが、いままでの息の勢いで、それなりの舌の形が音にかすかにかぶさる。
実際の発音どおりカナ標記すれば「アポ」が近いと思う。
しかし、「アポ」と書いてしまうと「Apple」という意味だとは誰にもわからんという結果になる。
大江健三郎の小説中で「プリリリルバビ」というセリフがあった。
これは Prety little baby であるのはなんとなく解ってしまうのだが。
フランス語のアールは二通りあって、南部ではイタリア語みたいに舌先を息で「ルラルラルラ」と震えさせる。
実際に演劇や詩の朗読では古式豊かにルルルとやる。
しかし、現代では「パリのR」というのをやる。
これは舌ではなくて、ノドチンコ (フランス語ではアダムのリンゴ)を震わす。
いっとくが、成人日本人ではこれは絶対にできない。
わたくしも出来ない。 出来ないものは聞き取れない。
なにやら喉からでる破裂音のような「ハー」という音に聞こえる。
さて、やっと クーフゥ の正体が解ってきたぞ。
フランス語のRの音を「ハー」と聞いた人があり、これは「フゥ」と聞こえると主張し、「クーフゥ」としたのである。
ごくろうさん!
実にくだらん。
実に意味の無い自己主張である。
Apple を発音してもらったら「アポ」と聞こえたので、当社の日本の社名を「アポ」とする、としたわからん社長を考えてしまう。
そんなことをしても、どんなことをしてもカナを読んでフランス語に聞こえるわけがない。
現に真壁刀義のは 「堂凡空風」 としか聞こえなかったぞ。
「L」や「R」はかな書きでは双方とも「ル」とするのが日本の伝統なのだ。
悪いことは言わない、今からでも遅くない店名を「ドボンケール」と標記しなさい。
そしたらフランス語の店名であることだけはすぐ解る。
もう一つ言わせていただければ、「ドウ・ボン・クーフゥ」とイチイチ中点を入れるのも止めて欲しい。
真壁刀義のように、4拍子で ドウ ボン クー フゥ と読まれること必定である。
そんなところで立ち止まってはいかんのだ。 何がフランス風だよ?
もし、アールをルと標記するのを避けるほど発音にこだわってたとしたら、このリズム無視はどういうワケだ。
「ドボン」 「ケール」 と二拍でさらりと一口でいうこと。
へんな、ポイントが外れたこだわりがほのみえ、滑稽というよりは、「それがイキでしょう?」なんて悦にいってるような軽薄な神経が見苦しい。
ケーキ自体はおいしそうだったのだがね。
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