スイムピアから豆乳ラ.. 言葉狩りが始っていた「コロナ」
[言語]

「もしともだちがコロナになったら」

2020/9/19(土)0:35
日本のニュース番組はどうしていまでも「コロナ対策」「コロナ禍」というおかしな略し方をするんだろうか?
正しくは「新型コロナウィルス感染症」であるべきだろうが、これでは長すぎるので「コロナ」にしてしまっているようだ。
なるほど「コロナ」は語呂的に言いやすいし覚えやすい。
それは分るのだが、コロナをこの疾患の略語にしてはいけない。

昨日、行きつけの歯科医院で口蓋のCTスキャン画像を見せてもらった。
画像は三種類、英語で表示されていて、少々必死で理解しようと努めた。
Axial、Sagittal、
Coronalの三種類。
Axialは判るのだが、後の二つはどの角度のヤツかわからない。
家に帰って辞書を引いてみた。
Sagittalは「解剖学:矢状縫合の」 日本語でもわからんのだが、まあサジタリウス(射手座)は連想できるので「矢」の派生語だろう。
Coronalは「解剖学:冠状縫合の」 コロナの原意の「冠」から。
これは頭の真上からの角度か。
ということだった。


コロナは通常、太陽の周囲の光冠ということで理解していたのだが、クラウンと同根の単語。
ウィルスの形がその太陽光冠に似ているのでコロナ・ウィルスと命名したようだ。
これを当初から「冠状ウィルス」と呼んでおけばこんな事態にはならなかった。
日本語の語感や語呂で「コロナ」はいかにも新鮮で言いやすい。
日本ではその圧倒的に呼びやすい語呂のおかげで独り立ちしてしまい、今では「コロナ」とは「Covid-19」のことと思っている方も多いようだ。

欧米のニュースでは現在では必ずこの疾患の名称「covid-19」を使っている。
Corona virus が言い換え、もしくは略語としての標準形のようだ。
単にVirusも多い。
どうして日本のメディアはこの疾患の正式な名称を全く使用しないのか?
ただドイツ語のZDFではKorona Krise (コロナ禍)とも言っていた。
同じ時間帯のフランス語F2のニュースでは "Crise de Covid"。

「新型コロナウィルス感染症」はこの病の正しい名称ではありえない。
ただ最初に出現したとき、便宜的にそのように呼んだだけだった。
もう出現して半年以上、そして深く我々の日常に根を下ろした感のあるこの周知の疾患をどうして未だに「新型」と言うのだろうか。
次にまた新しいウィルスが出現したときにやっと「旧型ウィルス」に?
いや、最近の日本語の好みで多分そっちは「新新型」とやるんだろなぁ。

この「新型」もこの種の病には使用すべきではなかった。
「新型爆弾」や「新型兵器」というヤツは「未知の」というより「新しく進化した、より強力な」という含意がある。
「新型コロナウィルス感染症」、この「最新兵器」風の呼称があまりに強烈すぎ、人々の意識に多大なインパクトを与えたことは否めない。
もし最初の報道が「変種冠状ウィルス感染症」くらいの平凡な名前にしておいていたら、たぶん一般のパニックもそこまで強烈ではなかったのでは?
英語・仏語・ドイツ語のニュースを聞く限り、「新型」という形容詞は全く使われていない

「新型コロナウィルス」を略すとしたら「ウィルス」もしくは「新型ウィルス」、「コロナウィルス」しかない。
新型コロナ」はまったくいい加減な略し方。コロナの形が新しいのではない。
あくまでコロナ(冠状型)ウィルスの新種である。
まして「ウィルス感染症」という病の名称まで「コロナ」と平気で言ってしまうなんてのは。
もう、私としては気味悪くてやりきれんのですが、いつものように、周囲の方は別に気になさらないようなので、私はここでも少数者の悲哀を噛みしめながらじっとあの世の親を。

今はコロナやからな
スポーツジムで水飲器が使えなくなっていた。
孫が「なんでやの?」と聞くと祖父がこう答えていた。

尚、先ほど見たF2のニュースでは祖父がリモートで会話している孫に"par ce mechant virus" (意地悪ビールスが)と言ってた。
え?今は日本ではウィルス? たしか「ビールス」だったはずだが。

「もしともだちがコロナになったら」
これはNHKのニュースで報道された、どこかの教育委員会が小学校向けに出したパンフレットにあった文言。

多分、現在のよいこたちは「コロナ」は何かの略称とは思っていないだろう。
「ケータイ」が略称であることを誰も意識しなくなったように。
「コンセント」が略称で、それもかなりおかしな略し方だった、とは私も長い間知らなかったのだ。
言語に柔軟性は必要だが、あまりにも安直な略称は言語の機能を脆弱にしてしまうぞ。
スイムピアから豆乳ラ・.. 言葉狩りが始っていた「コロナ」