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インテルメッツオ変ホ長 ..![]() |
[ピアノのお稽古] |
クライスレリアーナ(シューマン) |
2008/3/14(金) 午後 6:00 |
旅行に行き、一週間以上時差ボケが直らなかった。 夕食後ベッドに横になってテレビを見ていると必ず眠り込んでしまう。 そして夜半に意識が回復してくる。 異国の、どこともわからない宿の、時間も定かでない夜半の、半覚半睡の まだこの世に馴染めていない意識に、遠くからの音。 クライスレリアーナの第2曲か? のどかな、ぬくぬくとした夢の中のからみあい。 しかし、目覚めるには至らず、不可思議な異国のとらえどころのない夜に 意識が浮遊し旋廻するだけだ。 あいつなら、ゆあーん、ゆよーん、ゆあゆよーん、といっただろう・・・ 半覚半睡のまま、明け方のテレビから流れてくるピアノリサイタルの演目を 最後まで聞くともなく聞いてしまった。 これは遠くの、見たこともない異界からやってくる気分のつらなりだ。 見たこともない? いや、本当はよく知っている。 懐かしいくらいだ。 ただ、この世に合わせて自分を調整し、意識を組み立てこちらに出てくる時、 いつも忘れてしまうだけで。 ---<>--- シューマンの「交響練習曲」は前々回に練習した。 ピアニスティックで、くっきりとしたエネルギーに満ちた音楽だった。 しかしクライスレリアーナは「幻想曲」である。 かなり自由な構成で形式感より、気分の赴くままに即興していくような、だらだら とした無窮動的な音形が連なっている。 苦手な音楽である。 楽譜を探り弾いても、「はっきりモノ言え!」と毒づいて止めてしまうのがオチだった。 しかし、これは白昼に弾奏する音楽ではなかったのだ。 一度夢うつつの状態で全曲を聴くと、その気分が意識に入り込んでしまって、 ほとんど子供の頃に聞いた曲だったかな?と錯覚させてしまうほど奥まってしまう。 最後は魅入られて向こうに行ってしまった男の、この世への奇妙ななじみにくさに 感応してしまうのだ。 ちなみに、「クライスレリアーナ」とはホフマンの小説に出てくる楽長クライスラーに触発されたタイトルである。 ドイツにはトーマス・マンの「トニオ・クレーゲル」のように、この世に馴染めないタイプの人物を描いた芸術家小説の系譜がある。 楽長クライスラーさんも、オッフェンバックの「ホフマン物語」でカリカチュアライズされて描かれているような、夢と現実との狭間に混乱して生きていた人だったのだろう。 そこだけくっきりと耳にこびりつく奇妙な民謡風の鼻歌をうなりながら、闇の向こうに消えていく終曲も、何か・ズレていて(ベースのオスティナート(!)とか) ヘンに印象的である。 |
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