24の前奏曲集から No. .. 練習曲A♭作品番号なし ..
[ピアノのお稽古]

「美しき碧きドナウ」(ヨハン・シュトラウス)

2009/1/9(金) 午後 2:09
私はハノンだとかツェルニーだとかの定番ピアノ練習曲集を今までやったことは一度もない。

昔テレビで見たアニメの「トムとジェリー」の一話を思い出す。

 猫のトムがネズミのジェリーを今日も穴から誘い出そうと一計を思いつく。
 ジェリーはダンス好きなので、ピアノでワルツを弾いたら浮かれて穴から出てくるだろう、というのだ。

ここからがいかにもアメリカ的な展開。
 トムは広告を見、「2週間でピアノが弾ける」通信講座を受講する。
 申し込むと練習本が送付されてくる。

 一ページ目。楽譜に音符がひとつだけ。「ド」。・・・「ド」だけ弾く。
 二ページ目。「ド」の次に「ミ」が書いてある。・・・「ド」「ミ」と練習して弾く。
 三ページは「ド」「ミ」「ソ」「ソ」。簡単にいけそうだ。

 次のページ上のオクターブで「ソ」「ソ」、そして次 「ソ」「ソ」「ミ」「ミ」・・・

この辺で、見ているこちらにはトムが単音で「ドミソソ」「ソソ・ミミ」と弾くのが聞こえ、例の超有名ウインナワルツの
冒頭だ!と気がつく。
なんと独創的なピアノ独習システムじゃないか!・・・と笑ってしまう。

 ここからが早い。
 次の節「ドミソソ」「ソソ・ファファ」を弾くと、いつのまにか左手のワルツのリズムまで付いている。
 あれよあれよ、という間にトムがウィンナワルツを弾いてしまっているのだ。
 それもリストばりの華麗なテクニック、巨匠風の堂々たる演奏だ。

 まるでマンガ。
 だけど、マンガなんだからしかたがない。

 アニメの方では、この華麗なワルツを聞いたジェリーが穴から踊りながら出てくるので、いつもの展開のドタバタ劇が始まることになる。

このピアノ練習法は全くコミカルで、荒唐無稽だからマンガなんだけど、ここで白状する。
実を言うと私のピアノ奏法習得はまったく同じやり方でやってしまってた。

いきなりショパンの「軍隊ポロネーズ」の和音一個を下から順番に指をあてがっていき、全てが鍵盤上に配置できたとき同時に弾く。
で次の和音に取り掛かる。20分くらいやってれば、なんとかその1小節だけは通奏できるようになる。
この「いきなりショパン」で何と20年かかって、次に「英雄ポロネーズ」を暗譜してしまった。
で、後20年かけて通奏しようと練習しているのだが、未だ完成に至らず・・・
完全な自己流。この人生規模の徒労。

どうもご苦労さん!・・と自分をけなしてあげたい。

昨年、殊勝にもピアノを生まれて始めて習おうと考え、ピアノ講師のセンセイに面談した。

「今、何を練習してるんですか?」と言われ「ブラームスのドイツ舞曲、ショパンの前奏曲集と、
シューマンのクライスレリアーナあたり」と正直に答えた。
すると「曲ばっかりじゃないですか?」と返され、しばらくイミがわからなかった。

 ピアノって曲を弾くんじゃないの・・・?

よく考えた。
運指の練習曲とかの基礎訓練をしてから「曲」を弾くというのが、普通にいうピアノを練習する、
ということらしい。「曲ばかりで、基礎練習してないの?」というのが講師の問いだったのだ。

あ、そうなんだ!ユーレカ!
この世に生を受け既に数十年、人生が終わりかけてやっと真実を見、ここに一大回心がやってくる。
私の人生は根本的に間違ってたのだと気がつく。←手遅れじゃ!

ピアノを習いに行く計画は骨折や脳手術なんかがあって、ポシゃってしまったが、自宅安静中、
教えられたクラマー・ビュロー60練習曲を買い、二ヶ月くらいかなり集中的に運指練習を心がけた。

そして、それなりにいろいろ基礎的な欠陥を自覚できた。
主として、右小指の弱さがネックになりタッチミスをしていたケースが多かった。
音の曖昧さを誤魔化すため、ペダルを多用していたのでよくわからん音楽になっていた、等。

最近ではショパンのエチュードの第一番Cdurを毎回練習のはじめに弾くことにしている。
これは私にとっては右手小指の強化訓練で、その後「革命」を弾いて左手を無理に動かす。

久しぶりにヨハン・シュトラウス「美しき碧きドナウ」を弾く。
ペダルで誤魔化す悪しき弱点克服法も今は恥じ、正確な運指を心がける。

この「美しく碧きドナウ」は「トムとジェリー」の華麗なリスト風編曲ではなくて、単純素朴な3拍子編曲だ。(音楽の友社「世界音楽全集」収録版)
しかし、くっきりとメロディーを引き立たせるのは案外むつかしい。
左手の基本的なベースと和音のリズムをペダルなしでくっきり、そして控えめに弾くのは至難のワザ。

やはりさすがの名曲、転調する気分の更新がいかにも粋だ。
序奏から本題に入る「見栄」のきり方なんかは、いかにも伝統芸を感じさせる。

まあ、左手の何のヘンテツもない3拍子を第2拍を多少前にずらし、ウィーン風を気取る、
というような芸を勝手に施し悦に入っている所は、相変わらずの自己流ピアニストたる所以。

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