インテルメッツオ op.11 .. エチュード 第二集 (ショパン)
[ピアノのお稽古]

THE EASY WINNER (S. Joplin)

2017/2/6(月)16:58

前回はブラームスの最晩年の小品に捕えられ、死を前にして到達する清明な境地という話をした。
今はその澄んだ諦念をも過ぎ去り、やがて冬。
静かに人生が fade out ・・・という予定だったんだが(^^;

単純にして明快なイントロに引き続き、簡単明瞭なオルタネートベースに乗って陽気な2ビートが何の衒いもなく跳ね回る。

 私の人生はこれでおしまい。
 じゃいっちょう騒ぎ狂ってやろうかい! 
    イェ〜〜〜イ!

どうも私は今そんな気分になっているようだ。
Easy winner も Havy looser も、終わりゃ全部一緒くた。
泣こうと叫ぼうとわめこうと。

単純明快にして底抜けに陽気な音楽。
それだね。
単純明快に私は欲求し、その通りに生きて死にたい。
食べて寝て抱いて。

ジョプリンの生きた1900年初頭のアメリカの時代の空気はそんなところだったろう。
皆が貧しい移民一家で、一旗揚げようと都会に出、あるいは一攫千金を狙ってバクチに走り・・失うものは何もなく、稼いだ金は酒場で飲みつくす。
そこにはジョプリンのラグがホンキ―トンクなピアノで流れているのだ。

ただやたらと調子がいいだけではなく、時折ペーソスが交じるのがジョプリンのラグタイム。
当初の夢はいつの間にか霧散し、馬鹿げたいさかいでかけがえのない人を失い。

だからこそ、陽気に騒ごうではないか?
この最後の一杯をひっかけたら、なんだかよくわからんウチにこの世とおさらばできてるハズ。

しかし、こうして歌って踊って騒いでるうちに、そんなとこももうどうでもよくなってくる。

 ちょっと待て! この世はまだまだ面白い。 hemiq2017 

                 かも・・・


(↑古典的自殺の名所白浜三段壁)   

・・・ちゅうわけで、本日もナンバで陽気に騒いで来ようと思います。

       イェ〜イ!

------ちょいと付け足し--------
私は映画について殆ど書かないのだが、実はかなり映画を見ているのだ。
でも、多分本格的映画評を書くほどのモンじゃない。
ただ、この一風変わった西部劇の最後あたりで聞くセリフはいつまでも耳に残っていて、今もそいつが気分として回帰してくるので少々書き残しておきたい。

コーエン兄弟 「トゥルー・グリット」 2010
左の気難しそうなおッチャんは、右の気の強い少女(14歳)の復讐劇に雇われて同行する。
当初は雇われた金額等価分の働きをだけをしていたのだが、次第にこの難儀な性格の少女の父親風の感情も芽生えていく。
復讐は果たしたが、少女が蛇に噛まれ瀕死の重傷を負と、このおッチャンんは今度は少女を救うための困難な旅を続ける。
自分の命の危険をも顧みない英雄的行為だが、このおッチャんはそれをいかにも淡々と定められた業務のように当然の如く遂行し遂に少女を救い、そのまま去っていく。
後年、成人した少女はこの命の恩人を探し出す旅に出、ついに見つけ出すが3日前に死んだところだった。
死を看取った仲間の老人がこのおッチャんの事を嘗ての少女に語る。

ずっと一人モノだったようで、この数年は我々と一緒に旅をしていた。
いつも面白おかしく旅をして面白おかしい人生だった。

何かそのようなセリフ(字幕)だったがもちろん正確じゃない。
まだ少女だったら泣き出すような情景だが、厳格な教師風のスタイルの中年になっている嘗ての少女の表情は別に変わることはない。
淡々と去っていく嘗ての少女の後ろ姿でこの映画は終わっていく。

Joplinのラグタイムの「淡々とした陽気さ」の中には、どこかこの淡々と人生の山も谷も笑い飛ばして済ませてしまうどこか達観した気分がある。

いろいろあったが、いちいち立ち止まって泣いていてもしかたがない。
  面白おかしく旅をして、面白おかしく終わろうや。

Joplinのラグ・タイムを弾いていると、いつの間にかそんな気分が満ちてくる。

インテルメッツオ op.11 .. エチュード 第二集 (ショパン)