過負荷の審判 (付録) | 過負荷の構造 |
[フランス語通訳ガイド控][団塊の段階的生活] |
過負荷な顛末 |
2007/05/27 |
というわけで、退職隠遁生活にちょっとした趣味と実益を両立させ、 一応自由業でございます、という看板も上げられてめでたしめでたし。 という訳にはいかず、やはりプロのミチのきびしさをかみしめる今日この頃。 一過性と思ってたのだが、フランス語ガイド需要は例外的に高まっているらしく、 その後も高いユーロをポケットいっぱいにつめたフランス人がひっきりなしに やってくる。ふつーなら商売繁盛で結構結構というハズだが、もともと真剣に 労働生活を営む気もない当方は、看板をあげている手前断るに断れず、不承不承 京都方面に労働に行くのである。 好奇心いっぱいのクライアントなら、話は早い。当方のつたないしゃべりでも 喜んで聞いてくれ、憧れの日本の住民ということで礼儀正しく尊重もしてくれる。 ところが、先日のカップルには難航した。 女性は別に仏教とか寺とか日本式旅館とかに興味があるわけでもなく、 ただ日本通の男性にひっぱってこられただけで、どことなく投げやりな態度だった。 前日の強行軍に疲労困憊し、あきらかに部屋で寝ていたいといった風情。 おまけに京都は朝から雨模様だったのである。 最悪のスタート。 せっかく昼食に湯豆腐の老舗を予約したのに、いざ行こうとすると 「わたし豆腐、だめなの」とくる。 精一杯女性の気分を引き立たせようとしていた男性が気の毒だった。 というか、私も笑顔を作るのに疲れ、あらぬ方向を向いて「早く終われ!」と、 数回念じたのも事実。実際、二日前に同一コースを案内した別のカップルの ときの所要時間よりもかなり早く終わってしまっていたのだが(^^; どうしてもノってこないクライアントにはてこずる。 もとよりそんなに秀でたものではない当方のフランス語はとたんに湿ってしまう。 会話が弾む理由もない。何を言ってるのか、まったく聞き取れない時もある。 それでも、プロとして料金を支払っていただいているので、途中で中止し、 帰って風呂でも入って寝てしまうわけにはいかないのである。 うーん。自分の能力のなさがつくづくいやになる。客商売のつらさか? 心理的に落ち込むと自分の説明が支離滅裂になってくるのがわかるのである。 自分でもあんまりなので「私の説明、分かりますぅ?」とお伺いを立てる。 即「わからなーい。」とのお答え。そこで果てしなく落ち込んではプロではない。 なんとか「実は私も、さっぱりわかりません。」と切り替えし、 かろうじて笑いをとる、もしくは笑いでごまかす、というか。 うん、これは苦しい(^^; さすがに最後に宿に送り届けて別れるとき、この女性は「ごめんなさいね、 昨日から疲れてしまっていて。」と、低調な当方を気使ってくれた。 しかし、どんなときにも顧客に一定の満足を与えなければならないプロの重圧に、 ほんの駆け出しの私メは真に打ちのめされてしまったのだ。 趣味と実益、なんてのほほんとしてられるものではない。 あたりまえだが、プロの道はやはりそんなに甘いものではないのである。 blog upload: 2007/5/27(日) 午後 7:46
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