過負荷な顛末 観光ガイドの下見見学実験(奈
[フランス語通訳ガイド控][団塊の段階的生活]

過負荷の構造

2007/06/09
このところ、思わずまじめに労働してしまった。
家でぶらぶらしているよりはマシ、なんて軽いもんではない。
フランス語ガイドである。

貧弱な語学能力は今更、急激に強化するわけにはいかない。
しかし、とにかく、旅行エージェントに事前に指定された全寺社仏閣について
一席ぶつことや、想定される質問に答える最低限の準備はしておかねばならない。

法隆寺関連のサイトにアクセスする。
実際にガイドをされていた方が、すべてのポイントを解説したすばらしい
サイトがある。
http://www.eonet.ne.jp/~kotonara/zbunkatu01.htm
とてもすべてに目を通せるようなものではない。

せめて携行できるうようにとプリントアウトすると
有に100ページを超えてしまった。

とにかく前日に要点だけでも目を通す。
なになに?
「禅宗様の虹梁大瓶束式が和様の虹梁蟇股式と違うのは蟇股の代りに大瓶束(緑矢印)
を設けます。」?
そんなの・・・どうフランス語で説明できるん?

結局日本語で読んでも分からんものは、噛み砕きようもない。
この仕事の重圧に暗然とし、悶々として徹夜してしまう。
あ、春日大社の宝物殿の展示内容も調べんと・・

というわけで、仕事が入ると前日まで全ての活動が下準備にとられ、
ナイターを見る時間もない。いや、別に見てもいいのだが、見ていると
少しでも暗記してなきゃ、と心が焦り楽しむことはできない。
まあ、低調な阪神の試合なんぞ見ても面白くもなんともない(^^;

実際に案内すると別にクライアントは日本の仏閣建築のくわしい説明
なぞどうでもよく、ただ日本情緒を味わいたいだけと判明するので、
ほとんどの説明をすっとばしてしまう。ところが、まったく思いもしなかった
質問をぶつけてきたりする。
「釈迦は出家する前、子供は何人いたん?」・・・

あまり「さあ。今度調べときます。」ばかりやると、プロのガイドとしての
資質を疑われてしまう。
だから、目をつむってこう叫ぶこともある。
「三人。男の子二人とかわいい女の子です!」

やっと仕事が終わり、帰宅してからも良心の呵責に胸が痛む。
最初の頃に感じた「ああ、終わったぁ!」という無重力自由落下的
安堵感も、もう感じることはない。
やればやるほど自分の知識や能力のなさを再認識させられるだけである。

圧倒的な知識の不足。
早口のパリ人の発話を聞き取るリスニング力の不足。
概念を即興できれいに説明できるような文章構成力や単語力の不足。

相手の質問の意図が聞き取れず、「Pardon?」を繰り返すのも
3度はできない。プロとしてはなんとしてでも分ったふりして答え
なければならない。適当にカマかけて答えて当たればいい。
不幸にしてハズれたときの事態の収拾の仕方に途方にくれたり。

しかし、ひとつの大事な職業上のコツは身についた。
どんなに貧弱なガイド内容だったとしても、誠実な態度でにこにこ
と常に笑顔で接すること。一緒に食事するとき等には、個人的な会話
を共にして打ち解けるようにすること。

最後にホテルのロビーで握手をして別れる。
実際にいかに貧弱なガイド内容だったとしても、友人同士のような
感情が芽生えていれば、自然に握手のと気持ちのよい笑顔の挨拶が
を交わすことができる。少しばかり湿っぽい感情さえ生まれたりする。

要するに語学とか知識の問題ではない。
誠実な日本人の友達になってあげて、楽しい日本旅行の思い出に
なってあげればいいのだ。

しかし、そのためにも徹夜で一所懸命に準備をするような、
いわば職業的誠実さがなければならない。

で、残念なことに私自身はずぼらで、人つきあいもかなり
よくない自閉型の人間である。
要するにこの職業にはやっぱり向いてないのである。(−−;

毎度のクライアントとのミート前日の心理ストレス。
いやーぁ、これはちょともうやってられませんね。
当分、自信がつくまで依頼があっても居留守を使おう。
で、一生もう機会がなかったりとか(^^;
blog upload: 2007/6/9(土) 午後 7:47
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