パソコンゲーム 航空運賃は? ..
[バイク/野外徘徊]

バイクとの一年

2007/9/14(金) 午後 6:20
本日、自動二輪免許を受けて丸1年が経過した。

生まれて初めてバイク(自動二輪)に乗ったのが退職後というヒトもそう多くはなかろう。
まして私の場合自動車の運転経験もほとんどゼロ。

深夜のセルフスタンドで自分のバイクに給油しているとき、時々不思議な感覚が蘇る。
こんなところでそんなことをしているのが自分であるとは思えないのだ。

クルマを運転しない人間にとって、ガソリンスタンドなんて全く無縁の場所である。

そのほか高速道路のサービスエリアや道の駅等は言うに及ばず、国道沿いの華やかなショッピングセンター、ドライブスルーや深夜のファーストフードレストランの賑わいとか。
すぐそばにあったんだけど、今までまったく知らなかった世界である。

まあ、いかに世間サマと関わりなく過ごしてきたのか、自分でも呆れるが(^^;

同僚が何気なく口にする「道路」の話題、「外環状から8号線に入って・・・」とかいうヤツ。
こういうのも以前の私には全く意味不明の、従って生返事しかできない代物だった。

それが今では地図で道路をチエックするのが楽しみになってる。
だから「ああ、あの道は渋滞がひどいから、あそこはちょっと側道に降りてですねぇ」とかなんとか話をつなげられるだろう。

バイクで高速走行するときの快感は、本来空を飛べない人間が空を飛んだ時の自己拡大感のようなものだろう。
バイクは乗ると、自分自身の運動能力が無限に拡大したというような気になってしまう。
これが直接生理的な快感に繋がっているようである。

しかし私が本当にバイクにヤミつきになったのは、どこまでも続く山間の道を自由に走りまわる時の、あられもない気分の高揚があるからだ。

奈良県に引っ越してから20年経ったが、自宅と駅周辺の地理以外はまったく不透明であり、もっといえばどうでもいい場所だった。
ありていに言えば、日本で用がなくなれば、さっさとこの国からおさらばしたい、なんて考えていたくらいだったので、なおさらである。

だから単に難波から電車で1時間という時間だけが私の町の地理的意味だった。

自分の住んでいる場所がどんなところなのか、やっと今わかってきた気がする。
バイクで近隣の町や村、山や高原を走り回り、今まで遠い国の光景だと思っていた森林が、つい近所のいたるところにあるということも発見した。

ヨーロッパに来たみたいじゃないか!という感想も抱くこともある。

緑の牧草地が拡がる典型的な中欧のイメージもあり、いつかヨーロッパで暮らすという憧れはかなり以前から持っていた。

実際、30台の私は当時勤めていた会社を辞め、一人でヨーロッパ中を鉄道で回り歩くということもした。
都市の周りを取り囲むヨーロッパの森を通過する度に、もう死んじゃった辻邦生の表現を借りれば「身がこなごなになるような幸福感」を感じたものだった。

それから数十年経過し、煩雑で散文的な元の安サラリーマン生活に戻っていた私は、不遇な日常に自らをこう慰めるのが常だった。

「まあいい、会社辞めて好きなことはもうしちゃったんだから。」

そして、せめて退職後はヨーロッパに移住しようと決めていた。
その夢を糧にして、なんとか下級サラリーマン生活を耐えてきたのだった。


いよいよ会社をリタイアして、さあいよいよこの国と最後におさらばするか、と思っていた矢先、ふとした出来心でバイクに乗ってしまった。

発見したのは、濃い緑に縁取られた深い森の清冽な空気が、なんとウチから15分でいたるところに転がっているということだった。

バイクで近隣の山間を走る度に、森に憧れた嘗ての高揚感を感じることができた。
日本の森林も捨てたもんじゃない。
ただ、通勤路線は都市を結んで走っているだけなので、日本がこんなにも豊かな森林のある国だとは実感できていなかった。

それに私の出自は大阪の下町、「じゃりんこチエ」ちゃんが暮らしていた町である。
油にまみれた町工場、ケチな商店街、狭い路地に洟垂れたガキ共が泣き騒ぐ、高度経済成長期以前の大都会の裏側のどうしょうもなく散文的な光景があった。

もちろん今では当時の妙に暑苦しい・小便くさい・小汚くも貧しい町はもうない。
しかし申し訳ないが、私の日本のイメージはどうしても子供の頃にこびりついたこの戦後日本の原風景に行き着いてしまう。
日本脱出が私のガキの頃からのキーワードだったのだ。

「兎追いしかの山」なんていう牧歌的な子供時代を過ごしていたら、多少は私のその後の軌跡も違っていたと思うと、いかにも残念な気はする。

まあ、そういった生涯に渡るこの国のイメージをバイクが今修正してくれているのである。
そういってもあながち間違いではない。

つまり、退職後ヨーロッパに移住する人生的規模の大計画は思わぬところから
破綻してきた、ということである。


vo:smsy/hk2007/20544903.html
パソコンゲーム 航空運賃は? ..