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[団塊の段階的生活] |
回帰する星座 |
2007/12/1(土) 午前 2:38 |
夏場から夜の水練の帰りに、矢田山にバイクで駆け上り涼をとっていた。 いつの間にか晩秋になってしまい、夜気が冷たくなってもこの習慣は変わらず、 夜10時、誰もいない広場のベンチに座り、影絵となった森を眺めながら ヘッドフォンでブルックナーを聞くということになっている。 月夜の山野の光景は夢幻というしかない。 そして月のない夜空では星座が回帰していた。 都会でその他大勢風勤め人をしていた頃の夜の10時は、鶴橋のにんにく臭いホーム で満員電車を待ちながら、懸命に周囲の喧騒を締め出し、手に持った通勤本という ミクロコスモスに入り込もうとあせっていただけだし、第一遠くを見るための 近視めがねを常用していなかった。 星のことをずっと忘れていたのである。 昨年バイクを始め、乗車時にはメガネを常用することになった。 秋になって夜の山の広場に出たとき、メガネをケースに戻すことを忘れ、 そのまま夜空を見上げてしまったのだ。 いきなり頭上にくっきりとカシオペアのWがのっかって来た。 後ろにケフェウス、左前方に白鳥、天頂近くにほのかなプレアデスの舫。 くっきとした牡牛座アルデバランとにらみつけるようなさそり座アンタレス。 星座の名を覚えたのは40年も前の話だ。 星座を探した最後の記憶は大阪環状線沿いの路地だった。 ふと上を見るとかすかに星が並んでいた。 そのまま上を見ていると、後の通行人が不審に思い「何か探してるん?」 と聞いてきた。 「星座が・・」とすこし口ごもりながら答えた。 「え?星座?星?そんなん金にならへん。」と彼女(女性だった)は いい、さっさと追い越して歩き去っていった。 そしてそのエピソードあたりから私の星の記憶も消え去ってしまう。 急激に悪化した都市の空の見晴らしと、ただ散文的な勤め人生活。 視力の低下にもかかわらず、メガネを常用しなかったこの40年。 バイク免許のおかげで山野への足と夜空への目が同時に回復し、 昔なじみの星座が私に向かって回帰してきた。 気がつくと雄大なオリオン座が右地平線際に傾いでいる。 回帰する星座。 大阪の詩人小野十三郎は晩年の1986年(昭和61年)ハレー彗星の接近に際し、 子供の頃の1910年(明治43年)にこの彗星を目撃した思い出を書いている。 ハレー彗星の公転周期は76年。人の一生を考えれば、人生の最初にこの彗星を 見た人には、再び見る機会があるのは自分の生を終えるときになってしまう。 私は40年ぶりで星座盤を作製しようと考えている。 |
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