世界のエトス(J. 世界のエトス(J..
[団塊の段階的生活]

世界のエトス(J.ハーヴェィ)の重層構造(2)

2013/5/7(火) 午後 0:34
(2)
私の内側が崩壊していっているのに私の外側がまだ形を保っているのは自己矛盾である。
その私のものでない身体と精神を「私」として外の世界に晒すことを自己欺瞞と定義しておく。
 
そして私には社会的「私」という形が私の内側とは関係なく外から与えられていて、今では主としてそちら側の都合で私が強制的に成立させられている。
4月24日東本願寺難波別院(南御堂)でよく知らないが反戦反原発法要のようなイベントが催され、私の外側が「重誓偈」を導唱する。
内的な必然性は全くなく、それどころかもう外側に姿を晒さないと決めていたのだが、過去の私の外側が私の内側を外側に引きずり出す。
どうしょうもない自己矛盾が私の内と外にひしめきあい、内と外に対する嘲笑が籠り次第に陰湿になっていく。
 
意味も解らず、いや、意味は「決然と我仏道に帰依する」だが、言葉と心の乖離が、大真面目な演技で導唱する私を嘲笑する。
 
「いや、生活の利便性のために原子力を容認していたのは私たち自身ではなかったでしょうか?」
堂内に響く外側の理屈に反応し崩壊する私の内側が狂ったように嘲笑を始める。
崩壊していくのは世界やない。おのれやが。
仏教が外側の世界の問題を云々してどうする?
革命を起こす熱もなく、魂の問題を説くでもなく、うすっぺらい今上世間のスローガンに同期するだけで。
 
竜樹がその昔訳した漢文(呉音)を、あるいは親鸞が賛じた当時の歌唱をそのまま踏襲するだけで、自ら何事も現代の魂に伝えようとはしない仏教者の矛盾を以前私は怒っていた。
 
いや多分、親鸞は「考えるな。ただ念仏せよ」と諭したのだ。
だから「考えず。故に我あり」としたハハオヤは正しく、説く人としての仏教者は念仏だけ教えればいいというのだろう。
ならばよし、私には浄土真宗はもう無縁な教えである。私はすでに崩壊しつつあるんだから。
しかし、これだけは言っておく。
仏教が外側の問題にかまけていてどうする?
震災で崩壊し修復すべきは外側で、内側にはなにも手当するところはないとでも?
 
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合唱団には退団届を出さねばならないが、果たして退団届を出したら自由になれるというものだろうか。
この日の夜、別の合唱団に顔を出し、そこではそこで又別の規範に支配されているのを見る。
 
重層する世界のエトス。
幾重にも重層し、絡まりあい、その渦にただ漂っている泡のごときものが私。
 
たまたま現在の私が関係する社会が合唱団という種類の組織なので、その世界の話になってしまう。
しかしこの構造はいつでも同じである。
夫婦・家庭・自治会・会社・地域社会・日本や世界。
重層する世界のエトスの隙間にただ漂う私。
漂える余地があればいいのだが、もう私がごとき者が入り込む余地もない緊密な世界。
 
指導者は「そのように演技せよ」と言っているのだ。
決して「心が一つに」などなるわけがないし、そうなっては合唱ではない。
 
我々が遺伝子的に多様であるから人類は存続してきたのだ。
けっして「世界がひとつ」になったからではない。
我々が平等なのは「法のもとで」の話で、我々が本質的に平等なのではない。
我々は遺伝子的に不平等なのは自明で、だからこそ法としては平等と扱うと規定してあるのだ。
 
ところが、仏教者や合唱指導者や国家やテレビが「方便として」「演技として」「統治手段として」「ビジネスとして」見させようとする世界を、そのまま世界の実体と信じて疑わない世間(milieu)があふれている。
そしてそのように見ようとしてもどうしてもそのようには見えない異分子を排斥しようとする。
 
自分が見ている世界が絶対であり、その世界に加担しない異分子を悪として排斥しようとする「小学生並の正義に陶酔する」人。
 
世界を仕切る人。
 
ビブラートをかけてはいけない、と言いつつ自己満足なビブラートで模範歌唱して見せる自称指導者も(笑)。
実にわかりやすい偽善だね。
自己と他者への完全ダブルスタンダード。
 
フッサールは主観と客観を対立させる哲学の不毛を停止し、主観的認識から絶対所与を抽出しようとした。
人は自分の見たい世界で生きればいい。
しかし、私はもう見たくもない。
この一方的で傲慢で高圧的で共存を許さない、絶対的主観達。
私の見る世界からは偽なのだが、絶対善を信じ、他者に強要することで成立する偽善多様性。
 
まあいい。仕切りたい人は自分の世界の同じ住人同志を仕切ってください。
私には嫌悪と、自由な魂を束縛する世界への憎悪しかない。
 
崩壊する自我からは世界のエトスが崩壊していくことしか見えない。
 
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深夜、やっと自室に帰り着き閉じこもってベルリンフィル・デジタルコンサートホールに見入る。
 
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