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[静かな生活]

危なっかしく、それでも前に

2020/3/1(日)0:44

モロに年明けから鬱状態。
いや、今年ではなくて既に昨年から・・・つまり今や年中鬱か？

昨年秋のヨメとの旅行で何とか持ち直したのだが、その実昨年来のこの鬱の根が静かに確実に心の奥底にしっかりと。
特に昨年身内周辺からやってきた、この世の私への最終メッセージは圧巻だった。

「オマエには最終的に、決定的に、何も無い。」

まあ、ソレはそういうことなんだが、私には一向に老成達観の悟り、または呆化がやって来ない。
あの、私、もうとっくに古希すぎちゃったんですけど？　ソッチ、どうなってるんですぅ？

昨年はソレ対策にフランス語を教わりに行き、ピアノも教わりに行った。
どちらも私のささやかな、それでも生涯的規模での自負の源泉だった。
「七十過ぎてもう一度基礎から」ちゅう意気は感心だが、双方とも初期意図に反して悪い方に行くこともしばし。
自分の無能を今更他人に確認してもらって、どうだというんだい？
それでもしかし、何かやってないと絶対的無為という風な日常感に支配されてしまうのだ。

それが今年は年初からあからさまに。よしてくれよ。

そしてごく最近のある日、公園で遊んでいる幼児とその母親を見ていて、私は気が付いてしまったのだ。
公園でぼやりとしている私の横までやってきたその幼児は「ふうふう」というように大きく息を吸い込んでいる。
そして思いを決したかのように駆け出し、待っていた母親の手にぶら下がる。
すぐそばでボケっている私なんぞまったく眼中にない、母親と幼女の見事にそれだけで完結している完璧な世界を私は見た。
他には何もいらない満たされた完璧な世界と、すぐ横に居るのに全的に無意味無関係な私の世界。

この母子に充満している幸福感の源が私には全く欠如しているようだ。
これか。

　　　　　　　「愛情ホルモンの決定的欠如」

ネットで調べてみると、そいつはオキシトシンというもので、本来的には授乳を促すホルモンだが、広く男女を問わず分泌され、他との一体感、連帯意識や幸福感をもたらしてくれるものらしい。
そしてスキンシップ、文字通り人とのふれあいが分泌を促すという。

そんなに不幸な子供時代ではなかったはずだが、男のみ三人兄弟の真ん中でどうも私は孤立気味だった。
それにあの年代の親は生きるのに精いっぱいで、昨今のむやみにべたべたした親子関係ではあり得なかった。
いや、そんなことより、私には子育て体験というものが一切ない。
おそらくそれだ、私に決定的に不足しているのは。
愛情ホルモン分泌機能未成熟とかいうような。
そう思えば、私の妙に際立った孤立感、他者との連帯意識の欠如や違和感にある程度の説明がつく。

あの震災時に風靡した「絆」や「私に何ができるのか」とかのセリフが嘘くさくてかなわなかった。
「子供たちに確かな未来を」というようなフレーズに偽善の響きしか感じられなかった。
私は社会正義という感覚は理解できるのだが、人類愛や国民感情というような共生意識や連帯感に関する感受性が希薄なのだ。
しかし愛情や他者と連帯する幸福感を知らないということではない。
それは主として男女の愛という面から学んだだけで、相手との相互的な感情の交感が前提にある。親が子に感じる無目的的な情愛とは違うのだろう。

やはり私には決定的に不足しているものがあったのだ。
それは私以外の人では普通に持っているもので、その真偽を問うようなものではなく、無条件に「ある」という前提になっている属性なのだ。
だから、「オマエはこの社会では本質的に無意味に生きてしまったのだ」。

・・・というようなイヤに生化学的な客観的省察がつい最近私に生じた。
別にそれによって私の孤立感が軽減したわけではないが、少なくとも私が日ごろ抱いている漠然とした「この世への違和」が、どことなく腑に落ちる気になる。

他の誰でもなくやはり「オマエが悪いのだ」と自分で妙に納得できる気がするのだ。

で、今年はスケートを始めることにしたわけだ。

きっかけは温泉目的で行った三重のサンピア伊賀でスケート場オープンのアナウンスを見たからだが、「苦し紛れに何でも試みてみる」という長年の宿敵鬱攻めの積極的戦略として採用することにした。

写真は浪速スポーツセンタースケート場にて。
やはり、ここだった。
５５年前、当時の学校の行事でスケート体験をやったのは。

それ以来まったくスケートの経験はない。
従って、ただ氷上を危なっかしく歩いているだけだが、意外と手軽に「新しいことをする」という気分にさせてくれる。
この歳になると生きていることは自転車操業と同じ様相になってしまう。
生きようとしなければ生きてられない。
生きるには前に進むしかない。
どちらが前だかわからんが、とにかく前に。

危なっかしく、それでも前に、とスケート場で。

※浪速スポーツセンタースケート場：　高齢者　８００円　貸し靴　４００円也。

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