〔フライブルグ通信〕
[D28] 南シュバルツバルトの町と村(3−1)2011/09/01 8月28(日)
朝から快晴。
昨日の雨の所為か、大気が澄み渡り気温は完全に秋になっている。 いよいよ地元のバス路線で南シュバルツバルトの村に行く。 | |||
元来、路線バスは地元の人以外は利用しにくいものだ。
路線がよくわからんし、時間が不規則でしかもそんなに本数がない。 行き先や経路が表示してあっても、その地名を知らなければ何の意味も示さない。 しかし、接続しているREGIO路線の鉄道駅名は今ではもうすっかり暗記してしまっているので発駅・着駅ならよく分かっている。 インターネットで検索するとバスの時刻表がPDFで手に入った。 これをi-Poneにロード。 また、チチゼーの観光案内所でもらっていた"高シュバルツバルト”のホテル一覧には各スポットの地図も付随したので、これもそこだけ切り取ってリュックに入れる。
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時刻表からすると私の行動範囲の午後から夕方には最短でも2時間に一本くらいの接続しかない。
サンクト・ペーター村で4:30開演のオルガンコンサートを聴くには、4時に到着するバスに乗っている必要がある。
途中のサンクト・メーゲンにも立ち寄るとすれば、そこで2時間待ちになる。
ではサンクトメーゲンで昼食、ビールで時間を潰すことにしますか。
午後2時にサンクト・ペーターに到着してしまったら4時半まで何もすることがない。
結局ヒンターツァールテン駅前1時台発のバスで、と逆算して旅程決定。
もちろん万が一の場合の第2案も用意する。
とにかくバスは分かりにくいからなぁ。
特に山中で最終バスを逃してしまったら、もうどうしょうもない。 まあ、シュバルツバルト山中で遭難死できるのなら私とすれば本望である、とかまあ、そこまで一応覚悟を決めておく。
ヒンターツァルテン(HINTERZARTEN)
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11時、列車でヒンターツァルテン駅到着。
今週何回この駅を通過したことやら。
今回初めて降りてみる。
先ず駅前のバス停を確認。
サンクト・ペーター行きは13時19分発。
よし、2時間弱この町で過ごそう。
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駅前ホテルにクアハウス。
観光地図掲示板にスキー場の案内。
この駅も典型的な山岳リゾート地のようだ。 日曜日の駅前目抜き通りをゆっくり散歩する老人カップルの群れ。
うすうす感じていたのだが、南シュバルツバルトは老人天国とでもいうような様相で、まるでこの地域一体がドイツ中の老人をあつめた広域老人ホームなのではないか、とも思う。 | |||
大体、クアハオスというのが無理に日本語にしてみると湯治場またはヘルスセンターじゃないか。 ドイツ最高の湯治場がバーデンバーデン(北シュバルツバルト)で、カジノや劇場があり、ブラームスなんかもクアハオスの劇場でシンフォニーの初演をしている。 ドイツでは、というかヨーロッパでは歳とると老人ホームではなくて、山岳リゾートで長期滞在してゆったりと時間を過ごすのである。
だからコンサートや展覧会も定期的に開催され、都会でなくとも一応の”文化生活”も出来るような仕組みになってる。
まあ、年金が現役賃金の6,7割もいただける国のリッチな老後の過ごし方でしょう。
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駅前を20メートルばかり歩けばこの町の性格が分かってしまう。2時間もこんな小さな町で過ごすなんてもったいないか?
2時間あれば駅に引き返して、REGIO TICKETで行ける終点の町ドナウエッシンゲンまで行って引き返して来れるのではないか?とふとヨコシマな案が浮上してくる。 同じクラスの尊敬すべき行動力のわがY氏は、金曜午後からシュタットガルト経由でヘルマン・ヘッセゆかりの修道院とかその他とかを精力的に攻めているハズである。 私がこんな小さな町で「貴重な日曜の真昼間」2時間もウロウロしていると聞いたら、一体どう思われるのやら? と、そこにカフェでゆったりと談笑する老カップルがあり、そのカフェの名前が目に飛び込んできた。
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"DOLCE VITA” →
ドルチェ・ビータ 「悠々たる人生」か・・・
あ、そうだった。
何も急いで走る必要はない。 私はむしろ、静かな時間を得るためにこちらにやって来たのではなかったか? あぶない、あぶない(^^; 思わずY氏の精力に煽られてしまうところだった。
ドルチェ・ビータか、そだよな。
もう人生を走って駆け抜けることなんてする必要はないんだった。 ゆっくり時間が経過するのを眺めていればいいんだ。 | |||
この時から私はこの南シュバルツバルトに群生している悠々たるオジン仲間の一人になった。
シュバルツバルト風の遊歩道をゆっくり散歩し、クアハオスの読書室で新聞を読み(ただし交際相手募集広告欄と天気予報のみ)、ベンチでボケ〜っとして2時間すごしたのである。 | |||
やがて駅前にサンクト・ペーター行きのバスが来る。
水戸黄門の印籠のごときREGIO KARTEを頭上にかざし、運転手がへへーっと土下座する中をエヘンとばかり奥に通っていく。 ということでもないが、列車と違い、前乗りで先ず有効な切符を見せて乗車する必要がある。 運転手は満足そうにうなずいて「ダンケ」と応える。 気がついたのだが、バスの乗客は乗り込む際、かならず運転手にひとこと挨拶をしてにこっと笑う。運転手もしかりである。
これはシュバルツバルトの田舎風礼儀なのか、ドイツのバス全体がそうなのかよくわからんが。 | |||
おう、つつがなくバスに乗れた。
いよいよ南シュバルツバルトの村へと分け入るのだ.
もっとも、地元観光案内の表現によれば南ではなくて"HOH SCHWALTZWALD"。高地シュバルツバルトと訳すべきだろうが、ひよっとしてシュバルツバルトにも松竹梅があり、コイツは「シュバルツバルト並」じゃなくって「シュバルツバルト上」の方といいたいのかも?
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快晴である。しかも気温はそんなに高くない。
空気が澄んで直射日光がきついが、陰にはいればやや肌寒い。現金なほどの温度差。
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バスの左側の座席が直射日光にさらされていたので右の席に陣取ったのだが、これは失敗。どうやら右側の高地の縁に沿ってバス路線があり、見晴らしは左側が開けている。
列車なら移動するところだが、あまり人の動きが無いバスでは席を移動しにくい。
無理して移動したら今度は逆側が開けたりしたりするのかもしれない。
しかし結局バスは左手に丘陵の広がりを見たまま、大きく左に円を描きながら運行しているようだ。 つまりヒンターツァールテンから左手側に大きく放物線を描きながら二つ手前の鉄道駅キルヘンツァールに戻っていく形の路線である。
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