9・13
チューリッヒの観光案内には、聖母教会(Fraumunster)に
シャガール作のステンドグラスがある、と必ず書いてある。
見たいと思っていたが、今まで果たせなかった。
この教会の位置が中央駅より湖の反対側にある、とカン違いしていたからだ。
最初にこの町を訪れた30年前に地図を読み違え、逆の方向と思い、そのまま記憶してしまっていた。
以降数回はチューリヒを通過しているが、シャガールのステンドグラスの教会があったんだがなぁ・・と言いつつ、さっさと中央駅から鉄道に乗ってフランスに向かうのが常だった。
何しろスイスはヨーロッパで物価が一番高いし(個人的感想)、特に近年の状況で言えば、他の国で使用できないスイス・フランを持ちたくない。
スイスは非ユーロ圏なのだ。
今回もチューリッヒは飛行機を降りるだけで、そくさくと逃げるようにしてドイツのコンスタンツに行く予定だった。
とにかく中央駅(Haupt Bahnhof)に行ったが、まだ朝早いのでとりあえず駅のインフォーメーションで、町の地図をもらう。
応対してくれたカウンターのおじさんがにこやかに親切で、町の観光地図と公共交通機関の乗り方を教えてくれた。
旧市街はすぐ駅前だ。
ま、そういうことならチューリッヒでお昼までぶらぶらすることにして、駅のコインロッカーに荷物を入れ、もらった地図のモデルコースに従ってチューリッヒ観光開始。
この旅行中はもっぱら曇り空で、この日もチューリッヒ湖は灰色で寒々としていた。
昔見た記憶では、空の青・水の緑に対岸のカラフルな家並が映えて明るい印象だったのだが。
水辺の光景は天候にかなり印象を左右される。
後にもこの旅行は曇天に悩まされた。
さて、チューリッヒの高台の公園で町を見下ろしていると少し天気が回復、
ではもう一度川辺に下りて写真撮影に励むことにする。
少々疲れたので、橋のたもとにさりげなくあった「普通の」教会に入って休憩することにした。
「普通の」とは川向かいの二本の塔も誇らしげなGrossmunster↓に対しての印象である。
見かけはどうもぱっとしない(^^;
今まで何度も前を通り過ぎたが、強く観光意識を刺激するような造りではない。
それに昔なら「教会で休もう」なんて姑息な体力温存法には頼らなかったのだ。
・・・すこし変な内陣の教会である。
入り口からは正面を見れば普通の教会風だが、入り口の後ろ側にも小部屋があり、人が集まっている。
ただの「普通の」教会にしては観光客が群がっているような。
・・・あ、そうだったのか。
ここが例の「シャガールのステンドグラス」の教会なんだ!
果たして入り口後の部屋は合計9枚あるシャガールのひょろ長いステンドグラスを観賞するための小部屋だった。
言われてみればシャガールの色使いは元よりステンドグラス風。
しかし、丸みを帯びた聖母の形、わずかに原色をはずしたオレンジ色の光輝が近代の光を内陣いっぱいに注いでいた。
今回、チューリッヒ観光は予定してなかったし、この教会を訪れる目的もなかった。
やろう、と思ってもできないが、意識しないでいると何気なくできてしまうこともある。
教会に行くと、誰かがちょいと助けてくれるのかも。
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