フロイデンシュタットから郊外に出る。

サイクリング地図に従って隣村のバイエルスブロンを目指すハズだったが、
早くも牧場の馬に見とれ
道を外れてしまうのである。
地図に従い、正しい方向に向かおうとするが、森の中に縦横に走っているジョギング道を伝っていくといつの間にか方向がわからなくなってしまう。
道が交差する地点には必ず方向指示板があるが、道の行き先であって、必ずしも地図上の方向をさしているわけではない。
森の中では方向感覚なんてすぐマヒする。
森の中からジョギングする女性が現れ、「今、ここ」と地図上の地点を示してくれるが、大まかな地図ではやはり現在地はわからなくなる。
それにしても、この人どこから走ってきたのだろう?
あたりにもう村の気配はないし。
ドイツの女性のたくましさよ。
樅ぼっくり。
この山系の森には樅の木が密生し、その暗緑色の印象から黒森・Schwarzwaldと呼ばれる。
このような森がゲルマン人の故郷で、赤頭巾ちゃんとかヘンデルとグレーテルのような物語は森の生活から生まれる。
フランスのような明るい野(Champs claires)の国では、化け物どもの住む所はないが、ドイツの暗い森の奥には魔女や魑魅魍魎どもが棲んでいるのだ。
わっ、でたぁ!
・・・ おっと。
森の中のジョギングコースをバイエルスブロン村の方向へと走っているつもりだが、
本当はどちらを向いているのかよく分らない。
山道のアップダウンは楽ではない。
ダウンは楽だけど、下ればいつかは上ってこなければならない。
そのうち普通道路に出る。
山道から舗装道路に出たときの、足の楽さ。
うん、楽チン、とばかりに道路を走っていると次第に下り坂になっていく。
下ってしまうと、帰りには上り坂ということになるのだ。
しかし、足の疲労はこのまま下ってやれ、と言っている。
下ってしまっていいのか?
「バイエルスブロンのSバーンの駅から、車内に自転車乗っけて帰ればいい。」
「自転車乗せられるん?」「さあて・・まあ、何とかなるさ。」
そして、イチかバチか自転車は勢いよく坂を下っていくのである。
見えた!バイエルスブロン村。
それまで森の木に邪魔されて一向に展望がきかなかったが、それだけにこのパノラマの息を呑む見事さが引き立つ。

シュバルツワルト山系はあまり標高はないので、山の形自体は奈良県と大差ない。
しかし、特徴的なのは牧草地のやわらかい緑と家並、教会の尖塔。
正に絵葉書的(carte-postalisque)ヨーロッパの村。
もう、ひたすら下っていく
しかないようだ。
完全に谷間の村に降りてしまう。
この村の駅を探すが、地図からするとフロイデンシュタットに近いフリードリッヒスタール駅も近そう。
谷間の道路伝いにSバーンの駅を目指す。
谷道の下に駐車場があり、車から降りてきた夫妻に駅はどこか尋ねる。
やはり上の道路上らしい。
念のためにフロイデンシュタットへの道を尋ねる。
「あそこ、まっすぐ行けばいいが、自転車ではちょっとしんどいのでは・・」とのこと。
やはり、Sバーンに自転車を乗っけるしか方法はないようだ。
ホームに自転車を上げてフロイデンシュタット行きを待つ。
Sバーン到着。
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