コンスタンツからの脱出.. フロイデンシュタットの逆襲..
[南ドイツ・いきあたりばったり]

  チュービンゲンへの遥かな道 
 --- スターウォーズ [エピソード☆★] --- 

2009/10/5(月) 午前 4:08

9・14(9・15未明)

コンスタンツ駅の切符売り場には職員一人しかいず、かなりの列である。
もう営業時間が終わりかけていた。
そのうち売り場が閉まり、私が最後の客になってしまう。

別に切符売り場が閉まっても自動券売機で切符自体は買えるのだが、接続の時間や列車名・発着ホーム等を知りたければ切符売り場でプリントアウトしてもらう必要がある。

 「チュービンゲン、接続は・・あ、18時38分発Singen行きですが・・・あと2分しかない」
 「え?」

突然、このアジア系と思える国鉄窓口氏は立ち上がり、窓を開けて叫ぶ。
「Rufen・・!!」
列車に発車を止めるようにホームの職員に叫んでいるのだ。

同時に緊迫した状況を外で見ていたヨメが、ワケも分らずホームに走り出す。
・・でも、どの列車かわからんし。と走ってから反省したようである。

切符と接続案内をプリントアウトしている間に列車は出て行ってしまったのだ。

 「次の列車は?」
 「ありません」
 「えっ?」

思えば、マクドで手間取りすぎた。
チュービンゲンには今の列車での接続で夜の10時に到着するが、次の接続はもうないのである。
しかし、チュービンゲンの4つ星には予約を入れてしまっていて、当日なのでもうキャンセルはできない。
No show (無断キャンセル)で、全額支払わねばならない。

不吉な予感が早くも見事にその実体を出現させてきたのである。

「何とかできないんですか?」「今、調べてます。」
このアジア系窓口氏は責任感が強い人柄らしく、もうとっくに営業時間が終わっているのに熱心に経路を調べてくれている。

そして、出てきたのがコレ。

なんと、コンスタンツから左手上方(北西^^か)にあるチュービンゲンに行くのに、ボーデン湖の右岸を東に向かいオーストリア国境のフリードリッヒハーフェンまでいき、いったん幹線のウルムまで出、その後シュタットガルト方向に西行し、最後にチュービンゲンに到達するという奇想天外なルート。
ちなみに×印は Umschteigen (乗り換え)の共通マーク。
深夜の4回もの乗り換え!

しかし、これでも到着は翌日の午前2時。

いたしかたなし。これで行く。

「迷惑かけて申し訳ない。Tut mir leid.」と、この人は謝意を表してくれる。
私はかなり前から列に並んでいて、時間的には間に合ったハズだったのだ。
しかし、この人の責任ではない。
とっくに営業時間が終わっているのに誠実に職務を遂行してしてくれました。

この人の誠実な態度のおかげでリスキーな深夜の乗り継ぎ旅行をすんなり
受け入れる気にもなった。
窓口職員の態度はDB全体への信頼に直結する。

夜の八時半から夜行列車を4回乗り換えることになる。
ボーデン湖右岸や南ドイツの風光明媚地帯を走っているハズだが、
夜では何も見えない。
暗くて寒いだけ。

チュービンゲンのホテルの対応が心配である。通常なら夜までに現れないと
 No show 扱いになるはずだ。
「まあ、星4つだからそんなことはないと思うが。しかし、わからん。」
不安は募る。

(ウルム駅 午前0時)

9・15日に日付が変わり、深夜のウルム駅に到着。
さすがにインターシティの停車駅で線路が多い。
コンスタンツでプリントアウトしてもらった乗り換え案内にしたがって、3番ホームに行くと、列車番号が駅の表示と違っている。

何とアムステルダム行きの国際列車である。
おいおい、そんなICがPlochingenなんて駅に停車するんかいな?

深夜である。
乗り間違いは命取りになる。

駅員に確認しに行く。

「列車番号が違うんだけど?」
この駅員サン、大きくうなづき、付いて来いという。
ホームの列車編成表のところまで連れて行かれ、最後尾の3両に乗れという。
全体の表示はアムステルダム行きだが、途中で切り離され車両によって行き先が違うのだ。

うう、あぶないなぁ。
そんな情報までプリントアウトされていないよ。

「Letzte drei Wagen ?」とゆっくりとドイツ語で確認すると、「Prima!」(素晴らしい!)と
お褒めに預かる(^^;

(プロシンゲン駅 午前1時)

何とか間違えず4回に渡る深夜の乗り換えをこなし、その間に列車は遅れ、チュービンゲン到着は
2時半になってしまった。


さて、ホテルはどこだ?

駅前ですれ違ったお兄さん二人にホテルの住所をたずねる。
「そこの通りを入ってホテル・クローネの前の橋をわたり・・」
「あ、そこ!ホテル・クローネに行くんですよ。」
さすが四星、地元では知られたホテルのようだ。

深夜の通りを横切り進み、やがてホテルを見つける。

玄関を入ろうとすると、中から出てきたきちっとした服装のフロント係が扉を開けてくれた。

「予約している・・」と言おうとすると、皆まで言わせず、
「Mr. Hemiですね。お待ちしてました。《遅くなる》と予約票のメッセージにあったので。」
(Hotel Krone ****) 

ああ、これが星4つの実力なんだな。
こんな時間に到着しても、このレセプションの行き届いた接客。
深い安堵を感じる。

これで安心してベッドで眠れる。
深夜の夜行列車の心細さが一気に霧散する。

部屋も快適だ。
寝室と居間とが別の部屋になっている落ち着いたセミスイートである。

簡単なキッチンの小部屋もあり、湯沸し装置もついている。



すぐ寝るのが惜しくて、多少はしゃいでしまったり。
「やっぱり四つ星、いい。次も四つ星に?」とヨメ。


(朝食レストランから外を見る)

朝の街路は寒そうだったが、深夜の薄暗く 不安な寒さではない。
確実な一日が動き出すような、さわやかな気配に満ちていた。


ホテルは旧市街入り口の橋の
丁度たもとにある。
立地もよく、昼間のホテルの
階段・ロビーの雰囲気も、
堅実な風格を感じさせる。


これで星四つに対する絶大な信頼を刷り込まれてしまう。

実は、四つ星にもシャワーしかない部屋がある、とすぐに知ることになるのである。

コンスタンツからの脱出.. フロイデンシュタットの逆襲..