アパートも古く、広いのだが窓が主通り側だけしかなく、風が通らず熱気がこもっている。
テレビ、クーラー、インターネット設備も一切なし。
かろうじて冷蔵庫はあった。
しかし、学生寮に隔離されるよりは面白かろう。
決定。
また大学に帰り、10ユーロで食器一式を借り、世話人の一人マリウス君の車に同乗してアパートまで送ってもらう。
最寄りのバス停からアパートメントは坂になっていて、スーツケースを転がすのは大変だと思っていたので助かった。
こういう点では学生バイトのチューター諸君は良く働いていると思う。
がらんとしたアパートメントの何もない空間を見ていると、30年前に会社を辞め、すべてを捨ててフランスに渡り、学生生活を始めた時のことを思い出す。
全てを捨て、今までの全ての人生がスーツケースひとつになり、何もない部屋にたった一人立放し。
かすかに涙が出てきたのを思い出す。
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