Bibliotheque National et Universitaire(国立図書館兼大学図書館)。

堂々としたドイツ時代の建物。
町の図書館ではなく、大学関係者の研究図書館である。
いかにもいかめしい。利用は有料。
ストラスブール大学の学生なら入学登録時すでに図書館利用料を支払っている。
年間利用料37ユーロ。一時利用2ユーロ。
なんて、よく知っているように言うが、図書館の登録窓口の前の廊下での研究の成果である。
登録事務室の扉を開けて入る。
なんだか、敷居が高そう。
登録係員との押し問答。
「あなたは学校の教師?」
「いや、生徒です。大学ではなく、外国人用の語学学校。」
「アリアンフランセーズ?」
「また違う学校です。で、入館できないんですか?」
「いや、・・できます。2週間有効の一時利用カードが交付できます。
廊下にある登録申し込み用紙に記入してください。」
多少渋っているような様子だったので、少しガードが固いのかなと思ったが、後で図書館の説明パンフレットをよむと、教育関係者・研究者はまた別枠の料金設定があり、そのための確認だったようだ。
用紙に記入し、身分証明書としてパスポートを出す。
用紙に日本の住所を書いてしまったので、今の宿舎の住所のプリントアウトを見せると、そこから転記してくれた。
2ユーロ出して閲覧カード交付。
ここの階段の踊り場で誰かと喋っていた記憶。
古臭い石造りの階段をあがり、一階の(日本風では2階)の閲覧室1に行く。
昔は誰でも入れたハズだが、今は閲覧室に入るにはパリの地下鉄のようなバリアがある。
ここで2ユーロで交付してもらったカードのバーコードをかざすと、緑のランプが付き、バリアを回転させて入ることができる。
なるほど、セキュリティチェックが厳しくなってるなぁ。
と思って閲覧室に入ると、事務机の後ろにいた係員がつかつかと私に近よってくる。
うっ!また何かひと悶着が?
「下の登録窓口にパスポート忘れていると、連絡がありました。」
「あちゃ!」とにかく最近よく忘れる(^^;
あわてて階下に取りに行くと「もしもう帰っていたら、とんだカタストロフになるところだったね。」なんて笑っていってくれる。
途中通過した正面入り口の案内係りのオバサンも「もしもし、パスポートをわすれてませんか?」と声をかけてくれる。
館内に情報が行き渡っているのだ。
「はい。もう受け取ってきました。」
「あ、そうですか。それはよかった。」「どうもありがとう。」
というようなやり取りのおかげで、いかめしいBNUとも急に親しくなってしまった。

もう一度閲覧室に戻り、適当な席を確保。
まったく大学図書館で、学生連中ばかりである。それぞれ本を積み上げ、陣地を築いてノートに赤や黄のマーカーでマーキングしている。
ここでも勉強するというのは、ノートに色をつけるということらしい。
私も学校の「宿題」を広げ勉強することにする。
「図書館に勉強しに行く」というのが、最近の私の日課だった。
わざわざストラスブールまで来て「図書館に勉強しに」行くことはないと思うが。
しかし、思ったより快適。
うるさい日本の図書館の高校生と違い、こちらの大学生はもう少し静かである。
単に「大学受験生」がいないということが違うだけかも知れないが。
夜になってから席に着く学生も多い。10時まで開いているのだ。
彼らに混じって、ペンを走らせていると思いがけない酩酊感、もしくはユーフォリーというべき感覚が湧いてくる。
フランスで「学生生活」をしている、という昔の記憶が蘇る。
かつて私はこの上なく自由だったのだ。
少なくとも一度だけは。

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