午後学校側の手配でヨーロッパ議会見学。
実は先週、Conseil d'Europe (ヨーロッパ評議会)の本部を見学に行った。

右の新しいのがヨーロッパ議会、左の運河を越えたブロックの奈良県庁風(笑)がヨーロッパ評議会本部。
このヨーロッパ評議会はいわゆるEC(ヨーロッパ共同体)とは何の関係もない組織である。
もっとも、以前はヨーロッパ議会はもソチラの議事場に間借りしていたのだ。
しかし今は堂々たる議事場が屹立している。

現地集合ということなので、定時にヨーロッパ議会の建物に入る。
先週、集合時間に遅れヨーロッパ評議会本部に一人で押し入ろうとしたら警備員が制止に来た。
かなり厳しいチェックがあった。
しかし、コチラのヨーロッパ議会では建物に入るところまではチェックが全く無かった。
円形の建物(AGORAというらしい)の中庭に一人いると、ぐるりを取り囲む壮大なガラスの城の眺めに圧倒される。

ルイ・ヴァイスホールに集合というが、どこにも案内版がない。
適当にガラス壁の中に人が居そうな扉を開けて「ルイ・ヴァイスホールはどこ?」
というと「ここ」とのこと。
「CIELの人?後ろで待っていてください。」「はいな。」
というわけで、高校生の集団の後ろで待ってたのだが、どうも集まりがわるい。
まあ、他人のことは言えない。
先週は私が時間に遅れ、結局無理をいって全く別のグループに混じってヨーロッパ評議会本部を見学させてもらった(^^;
高校生達が入場ゲートに消え、しばらくすると係員のオジさんに連れられて、ウチの生徒らしい女の子がやってくる。

やはり集合場所がわからず、やさしそうな職員のオジさんに尋ねたのだろう。
「CIELの生徒?」と聞くと、そう、という。
結局、私が一番乗りだったようだ。
ここで、このオジさんの役目は済んだハズなのだが、「あんた、どこの国の?」と話を向けてくる。
日本人だ、というとやおら話し出したのだ。
うむ。この話を書くと、ヨーロッパ議会の見学記を書く余地がなくなる。
先ず、議会議事場をとりあえず紹介しておく。

やがて同僚生徒諸君も全5名そろい、議会の広報職員の案内で広くて明るいヨーロッパ議会の議事場を見学ツアーになる。
ちなみに同輩生徒の国籍は独2、コロンビア、ロシアと私。互いにクラスが違うので、初顔合わせである。
空間を贅沢に使った議事場外の廊下。

広報担当のお姉さん。本当はドイツ人らしい。
二重螺旋階段は「誉の階段」と呼ばれ、この原型はレオナルド・ダ・ビンチが考えたそうだ。

ひとつ上の階から降りてくる人とは顔をあわさずとも済む構造になっている。
シャンボール宮のように外交官が集まる建物に実例があるそう。
ふーん、私にはDNAの模型に見えますが。
ちなみにストラスブールでDNAといえば地元の新聞の名(Dernieres Nouvelles d'Alsace)。
後でこの新聞の記事をどういうわけか引用することにする。
議事堂。

壮観である。
もっとも、私自身は国会議事堂はおろか、地元の市議会も見学したことがないので、比較するにも根拠は全くない。
いろいろ広報担当嬢はヨーロッパ議会の仕組みについて話をしてくれたが、細部は非ヨーロッパ共同体のメンバーの私には、ま、どうでもいいことだ。
面白いのは議会の公式言語の話。
ヨーロッパ評議会の方は加盟国数47だが英・仏2言語だけが公式言語である。
昔から外交交渉はフランス語で、という紳士協定がヨーロッパにはあった。
それに実用的な理由で英語を加えておけば文句はなかろう、という発想か。
人権問題の調停機関のような役割のヨーロッパ評議会とは違い、このヨーロッパ議会での議決は各国の利害に直結している。
加盟国数27で、なんと22の公式言語が運用されているのである。
だから各国の代表は自分の言語で演説することができる。
ブースに待機している22もの言語の専門家達が同時通訳していく。
「実はバスク語は入ってません。一回だけバスク人の方が演説したが、
英語を喋る以外になかったと憤慨してました。」という。
ヨーロッパの言語地図の複雑さを考えれば22言語でも足らないのかもしれない。
もちろん、カタランもアルザシアンも入っていない。
しかしまあ、各国の議員は母国の公用言語では演説できることを保障されているのである。
言語は自分のアイデンティティの根幹そのものである。
通貨を統一できたんだから、言語も統一しよう、なんて誰も思っていない。
それどころか、ストラスブールの中心街の
住所標記は2言語併記になっていた。
フランス語の下に地元のアルザス語の表示がある。
以前にはこの標記はなかったものだ。
どんな少数言語であっても、使用者が少数という理由で不利になるシステムではいけない。
このように民主主義というものは、実に莫大なコストを支払ってでも維持しなければならない
厄介なモノなのらしい。

(ヨーロッパ議会中庭のオブジェ)
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