別にリヨンには目的があったわけではないが、飛行機のオープンジョーの経由地を
とりあえずリヨンとしただけ。
とりあえずローヌ・ソーヌの川岸を見に歩く。
まっすぐな街路が碁盤目になっていて、これは都会である。

ローヌ河畔にでると、対岸のノトルダームバジリクが異彩を放っている。
ボーヌのカーブのお兄サンが、リヨンに行くならFourvierがいい、といっていた。
そのバジリクのあたりである。

歩いて登ろうかと思ったが、もうトシである。
通行者に、あそこまで歩いて登れるかたずねる。
「もちろん。または・・その・・・なんだぁ・・」
「バス?」
「フニュキュラ(登山電車)もある。」
「あ、あるんですか」
「その方が疲れないしね」
まっすぐ丘の下に行くと地下鉄の駅があり、フニュキュラの矢印もある。

自動販売機で「2時間フリー」切符を買う。
2時間は乗り降り自由。
もちろんこのフニュキュラも。
フニュクラ乗車。カメラを構えるが全部トンネルの中だった。
丘の上の出口でバリアがあり、いかにもチケットを入れるような図が書いてある。
下の穴にチケットを突っ込むがバリアは動かない。
通すのか、と思って全部入れると手ごたえ無く落ちていく。
バリアを通って反対側の改札台を見る。
どこにもチケットが出てくるところはない。
大間違いをした。
使用済みチケットを捨てる穴だったようだ。
まだ1時間50分残っているチケットを捨ててしまったのだ!!
パニックになり、次の降車客に拾ってくれるよう呼びかけるが皆素通りである。
丘の上の駅の乗車側に回ってみるが無人駅である。
バリアはちゃんと一方通行をキープし、もう戻れない。
次の到着までまち、降車客によびかけるが「もう、しかたない・」とかいわれただけで、誰も立ち止まらない。
バリアの隙間からわめいているヘンな男でしかなかった。
バリアを乗り越えようと思ったが、多分あの穴から切符をつかみ出すことはできない。
2.2ユーロの半分以上残したチケットはあきらめる以外にない。
わずかな金額だが、あの紛らわしいチケット回収のシステムは詐欺に近い。
本当は自分がうかつなのだが、リヨン当局への怒りは収まらない。
ノトルダームバジリクが目の前にあるのだが、この感情の波が収まらないので素直に観光気分に戻らない。
先ずソーヌ越しのリヨンの町を見るが、好天霞でそんなに見晴らしはよくない。

ライン越しのバーゼルのくっきりとした光景が目に残っているで、なんとなく二番煎じのように見えてしまう。
屋根がエンジ色なのも、少々うっとおしい。
バジリクの中に入る。

驚くべき装飾過多の空間だった。
柱の上の聖人達。
壁の唐草模様や浮き彫りの動物達。
色あせているとはいえ金色の氾濫。

絶対に装飾のない空間を残さないぞという中国式の執念が、まだ怒りの発作が収まっていない当方には少々煩わしい。
気を静めよう。
静かに会衆席に座り、古い時間と遠い世界への憧れを感じよう。、
ただ昨日見たディジョンのサン・ベナン教会の内陣の涼やかな空間のイメージが残っていて、このバジリクの「これでもか」の絢爛華美は今の私の精神とはそぐわない。
このような圧倒的迫力の前には「へへえ、まいりましたぁ!」と全面降伏する以外には精神の置き場がない。
しかし、今の私は差し引き1ユーロ強の損害を高じさせたリヨン交通当局への怒りの執念があり、白旗を揚げる謙虚さには至らないのである。
しかも、小さな音量ではあるがこれ見よがしのバックグランドミュージックまで流れているのである。
曲は多分ラターのレクイエムかソレと同等の現代の宗教合唱曲。
私にはもう付いて行けませんよ。と、あきらめて席を立つ。
しかし、右翼の扉から出て階段を下りるとき、驚くべき発見をする。
このバジリクは2層構造で、本堂内陣の空間の地下にも同様の面積の会堂があったのだ。
こちらの会堂の内陣は簡素で、はるかに実際的な信仰の場の雰囲気がある。
静かにマリア像に対陣して瞑想している人もいた。
公式には上、日常の宗教活動には下を使うと思われる。
そうだろう、そうだろう、と思ったとき、リヨン交通当局への怒りは消え、私は本来の善良な魂へと回帰したのである。(笑)
本来なら足をかばい、フニュキュラで下るハズだがもう一度切符を買う気にはならないので必然的に階段道でフェルブールを下る。

あまり通る人もなく、落書きが一杯で多少荒れた雰囲気だが、それなりの風情もあることはある。


下り通してそのままソーヌを渡ると、そこは市役所前広場。リヨンの中心だ。

次の目的、リヨン美術館に入る。

しかし、丘を下った足にはこの広い美術館の広範囲なコレクションは少々きつかった。

美術館を18時に追い出されれば、すでに夕暮れの市役所前広場界隈である。

18世紀の宮殿様式そのままの市役所や、伝統の大理石様式が近代的なガラス張りの中に封じこめてあるようなオペラ座の建築。


誰かがリヨンは大阪に似ていると言ってたからか、ローヌ・ソーヌの中洲にある市役所前の雑踏は大阪の中ノ島の連想も運んでくる。
宿の近くの橿原イオン・アルルショッピングセンターとよく似た(笑)リヨン・パール・ディユーショッピングセンターで軽く食べ、宿に帰ってインターネット接続に手こずる(^^;
定宿リヨンのibis。
料金明示・どこでも同じ設備で安心できる。。
平日より土日の方が安い。

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