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[台北で]

台北で(4)

2015/11/14(土)22:56
   −−−−−死に場所探しの旅−−−−− 

もう侍の世ではないのは承知。
しかしこのまま閑居し一生を終えるにあまりに不甲斐ない。
何でもいい。
例え負ける側の戦だとしても。
ワシは闘って死にたい。最後に。


と、そこまでレトロな感覚ではないが。
ただ、此処でこのまま死ぬのを待っているのはイヤだ。
此処では死にたくない。

しかし、世界にもう私の場所は無いのはよく分かっている。
だから、今はその逆の場所に目が行く。
自分が別に自分でなくともいい場所ということだ。
自分の「ささくれだったアイデンティティ」を十把ひとからげにしてきっぱりと拭い去ってくれる場所。
複雑に構成された偽善システム日本の中で「日本人」という偽善パターンをもう演じなくてもいいところ。

まだこれからも生き続けるのなら、私は自分自身をもうきっぱり止めてしまいたい。

熱帯の暑さの中で、蕩けるように何も考えず、ただ食って寝るだけの、自堕落で淫蕩で無責任で、3日でも10年でも全く同じようにして。

         私は旅で自分の死に場所を密かに探している


まあ、しかしそれは台北ではないな。

確かに、ふと昔の子供の頃の日本が見えることもある。
しかし、台北はあまりに日本に近過ぎる。

何か、広漠とした「熱帯」が拡がり、その奥には砂漠があるようなところ・・・


こんな本を思い出した↓

神津拓夫「アレキサンドリアの落日」沖積舎 1996 
1924産。63歳のとき800万円を持ってエジプト・アレキサンドリアに行き、そのまま10年生き砂漠の奥に入って自死する話。
豊かな日本への反発と、貧困だけど豊かなエジプトの人達への共感・風にまとめてしまうとつまらない類型的な話なんだけど。
買った娼婦とそのまま同棲しつづけたり、妙になまなましい老人の性の描写があったり、あるいはピラミッドの中で一人で一夜を過ごす体験を語ったり・と何か類型的でない・もっといえば狂おしいような挿話がある。
まったく意味もなく著者自身が実名で登場したりするという素人っぽいとしかいいようもない場面もある。
最後に砂漠に入っていって自死する描写が妙にリアルでいい。
紛れもない性と死を70歳の老人が書いている。
文体は悪くはない。
なかなか怪しげであいまいな雰囲気の話ではあるが、文体は明晰で若々しい。
奇妙な印象の本であり、変な老人の作者である。
⇒読書控 2000.2.17

多分、私と同じようにもうどこかに消えていってしまいたい、と切に思っている老人諸氏も多いようにも思える。
60歳を超えても遊び狂いたいし、70歳でも毎日エッチはしたい、と思っている老人だっている訳だ。
しかし偽善大系日本ではそんな一般の不良老人は社会的に許されることはない。

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さて、台北滞在最終日。
なんと見事に晴れてしまったが、最終日にはこのサウナに行く予定にしていた。↓(15階)

かなり大規模なサウナで、仮眠室も広く、マッサージも完備。
飛行機は夜発なので、午後一杯このサウナで有名なアヤしいマッサージサービスを受けてやれとか(^^;

たまたま宿泊ホテルからは地下鉄で2駅の距離だったので、午前中はわざとゆっくり台北市の下町を歩いて見ることにした。

近代的ビルと幅広い幹線道路から一歩裏側に入ると市場があって人が集まっている。

台北ではスーパーに駆逐されず、市場が市場として生きていた。


さて、サウナ(三温暖)。
持ち物は小型リュックサック一つなので、簡単にロッカーに収まり、さっそく裸になって風呂に入る。
温まって休憩室に行くと、さっそく「スペシャルマッサージは?」と声をかけてくる。
ちょっと待ってくれ、今風呂から上がったところじゃないか。
ゆっくり休憩させてくれよ。また後で声かけるから・・・等々。

仮眠室を見学に行く。
昼間なので大小の部屋に別れた仮眠室には殆ど誰もいない。
これならホテル代浮かせることも可能か・・とか記憶する。
また、休憩室に帰ったり風呂に再入浴し、タブレットでメールチェックし・・
そろそろマッサージしてもらうか(^^;
←これは桃園空港のラウンジ入り口
この最終日だけラウンジで飽食できたのだった。


最初に目のあったおネエさんが「マッサージ?」という。
「値段は?」
「2000/h」。
え?事前の調査より安い?なら、いいか・・・(^^;

という訳で、おネエさんの案内でマッサージルームへ。
で、一時間たっぷり全身マッサージで絞ってもらい、無事休憩室に帰還。
途中で「え?」と思ったのだが・・・美人のおネエさんだったので、まあ、いいかと。

どうやら私が申し込んだのは「全身オイルマッサージ」で特別マッサージではなかったようだ。どうりで、というか、この時間のサウナの客は近所のご老人ばかりで、そんな特別マッサージの需要があるようにはとても思えなかった。
やはり、夜に行かんとイカンのかねぇ(^^;
まあいいや。
今回は不発だったが、台北ならいつでもまた行けるし。(^^)v

台北駅からシャトルバスで桃園空港。
早めに行って、ラウンジで飽食するのだ!

実は関空でも同様な意図で早めに行ったのだ。
しかし、行ってみると KAL BUISINESS ラウンジはなんと2時から3時半までクローズしていた。
台北行きのピーチ便は4時過ぎ発。
これが他の航空会社の便だと、例え10分でも入室して食いまくるのだが。
ピーチの本拠のターミナル2まで連絡バスに乗ったりして行かねばならない。
とてもラウンジに入場していては出発に間に合わなかったのだ。
隣のカード系「比叡」には入れたが、食べ物無、ビール有料のどうしょうもないラウンジだった。

桃園空港ターミナル1のラウンジでは予定通りほぼ飽食できた。
しかし、早めに行ったつもりだが、台北駅のバスターミナルが2カ所あり、迷ったりしてかなり時間を食ってしまった。
結局、e-チェックインに対応していないピーチ・アビエーションのチェックイン開始時刻と同時くらいに空港に着いた。
逆に言えば、いくら早く空港に行ってもチェックイン前だと出国エリアの向こうのラウンジには行けないのだ。

ピーチ本拠の関空ターミナル2帰着22:30。
珍しそうにのんびりカメラを構えている台湾系お上りさんを後目に、日本人は空港を駆け抜け11時台の南海最終急行を目指す。
日付が変わってから無事帰宅。



今回も私の飛行機は落ちなかったのだ・・・
今回も不発・・

死に場所探しの旅、と書いたが正確に言うと、どこでだっていいのだ。
旅には思いもかけぬリスクと心的ストレスと願ってもないアクシデントに満ちている。
旅先では生命の危険度がかなりの倍率で跳ね上がる。
この未だに生ききれない、中途半端で未完のままひきずっている生命を、ただ異国の旅先で終了させさえすればいい。

私には外国旅行保険が付帯しているのだ。
私は今はただ命を薄めきり、屁のように生きているだけの老人だ。
しかし私が死ねば、その時点で幾ばくかの具体的なカタチをきみに残すことができるのだ。
どう、いいだろ?

異国で死ぬということ。
今の私は、ちょいとアブないソッチの想念にどっぷりとのめり込んでいる。

「台北で」 完

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